ウェルシュ菌とは

ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)とは、クロストリジウム属に属する細菌の一つで、カレーやスープなどによる食中毒の原因となることで知られています。ウェルシュ菌は環境中に広く存在しており、特に土壌や河川、下水に多く見られます。ウェルシュ菌が食材や料理に混入すると、適切な温度管理がなされない場合、増殖します。

ウェルシュ菌は、そのままでは人体に害を及ぼさないのですが、食べ物と共に胃や小腸内で増殖する過程で、エンテロトキシンという毒素を産生します。そのため、ウェルシュ菌が大量に増殖した食品を摂取すると、エンテロトキシンの毒素により食中毒を起こす可能性があります。

カレーにおいて特に注意すべきなのは、ウェルシュ菌が約10℃~60℃で急速に増殖するという性質があることです。そのため、カレーを調理した後は早めに冷蔵庫で冷却、又は冷凍し、食べる時にはしっかりと加熱することが重要となります。特に持ち帰り・テイクアウトの場合や大量にカレーを作った場合には十分に注意が必要です。
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ウェルシュ菌の食中毒の特徴とは?

ウェルシュ菌の食中毒の特徴

ウェルシュ菌による食中毒は、いくつかの特徴を持っています。また、ウェルシュ菌の食中毒は人から人への感染はしない、原因となる食品の摂取から24時間以上が経過した場合は発症しないなどの特徴があります。

食中毒の症状のタイプ

ウェルシュ菌による食中毒は、大きく2つのタイプに分けられます。一つは嘔吐型で、摂取後1時間~5時間ほどで急な嘔吐や吐き気、腹痛が症状として現れます。もう一つは下痢型で、摂取後8時間~16時間ほどで腹痛と水様性の下痢が症状として現れます。嘔吐型と下痢型のタイプは、ウェルシュ菌が産生する異なる2種類の毒素によって引き起こされます。

不適切な温度管理による食中毒

ウェルシュ菌は広範に存在するため、様々な食品で食中毒を引き起こす可能性があります。特に、調理後に適切な温度で保存されていない食品や、適切に再加熱されていない食品が関与することが多い食中毒です。具体的には、ご飯やパスタ、調理済みの肉類、スープ、ソース、カレーなどが該当します。

ウェルシュ菌の感染経路

ウェルシュ菌の感染は、基本的には汚染された食品の摂取により発生します。人から人への感染は一般的ではありません。

食中毒の症状の期間

一般的に、ウェルシュ菌による食中毒の症状は24時間~48時間以内に自然に治まることが多いです。ただし、子供や高齢者、免疫機能が低下している人などは、症状が長引くことがあります。

適切な水分補給による治療

ウェルシュ菌の食中毒では、ほとんどの場合、特別な治療は必要ありません。ただ、脱水症状を防ぐためには適切な水分補給が必要です。重篤な症状がある場合や症状が長引く場合には、医療機関での診察が必要となります。

ウェルシュ菌の食中毒になりやすい人とは?

ウェルシュ菌の食中毒になりやすい人

ウェルシュ菌による食中毒は誰でもなりうる可能性がありますが、特に免疫力が弱い人や慢性疾患を持っている人は食中毒になりやすいと言えます。また、ウェルシュ菌の食中毒は16歳~50歳の青壮年よりも、高齢者や子供のほうが食中毒になりやすい傾向があります。

高齢者や小児、免疫力の低い人

高齢者や小児、免疫系が弱い人や慢性疾患を持つ人、免疫抑制療法を受けている人などは、一般的に食中毒になりやすいとされています。

不適切な食品の取り扱いをしている人

食品を適切な温度で保存しない、又は食品を十分に加熱しない場合、ウェルシュ菌の食中毒のリスクは高まります。

食品の衛生環境が悪い場所

衛生状態が十分でないレストランやフードコート、屋台などで食事をする場合、ウェルシュ菌を含む様々な食中毒に感染する可能性があります。

ウェルシュ菌の食中毒の症状とは?

ウェルシュ菌の食中毒の症状

ウェルシュ菌による食中毒は、主に嘔吐型と下痢型の二つのタイプの症状を引き起こすことが知られています。それぞれ、摂取した菌が産生する異なるタイプの毒素によって引き起こされます。

食品を食べてから、24時間以降に食中毒の症状が出ることはありません。また、嘔吐型、下痢型ともに重症化することはほとんどありません。

嘔吐型の食中毒

ウェルシュ菌の嘔吐型の食中毒は、摂取した菌が産生する嘔吐毒によって引き起こされます。主な症状は、急な嘔吐や吐き気、それに伴う腹痛です。嘔吐型食中毒の症状は、毒素を摂取してから通常1時間~5時間程度で現れます。

下痢型の食中毒

ウェルシュ菌の下痢型の食中毒は、摂取した菌が産生する腸毒素のエンテロトキシンによって引き起こされます。主な症状は、腹痛と水様性の下痢です。下痢型食中毒の症状は、毒素を摂取してから通常8時間~16時間程度で現れます。

ウェルシュ菌の食中毒の原因とは?

ウェルシュ菌の食中毒の原因

ウェルシュ菌の食中毒は、特に食品の取り扱いや保存方法が不適切であった場合に発生することが多い食中毒です。ウェルシュ菌は、広く環境中に存在するため、食材や調理過程を通じて食品に混入することがあります。

また、ウェルシュ菌自体は加熱により死滅しますが、ウェルシュ菌が生産する胞子は非常に耐熱性であり、一般的な調理過程の加熱では死滅しない場合が多いです。そして、ウェルシュ菌の胞子が約10℃~60℃となった食品中で発芽し、増殖を始め、その過程で毒素を産生します。

適切な加熱が行われなかった場合

適切に加熱されていない食品は、ウェルシュ菌の胞子が残っている可能性があります。ウェルシュ菌の胞子は再び成長し、増殖し、毒素を生成する可能性があります。

食品が適切な温度で保存されていない場合

ウェルシュ菌は、特に温度の危険ゾーンである約10℃~60℃で急速に増殖します。そのため、食品がこの温度範囲で長時間放置されていた場合、ウェルシュ菌の胞子は発芽、増殖を始め、毒素を産生します。

再加熱が不十分な場合

冷蔵保存や冷凍保存された食品を食べる前に、再加熱する際の加熱が不十分だと、食品内にウェルシュ菌が残り、毒素を産生する可能性があります。食品を再加熱する際には、全体が均一に加熱されるように注意する必要があります。

ウェルシュ菌は何に入ってる?食中毒の原因食品とは?

ウェルシュ菌の食中毒の原因食品

ウェルシュ菌は多くの種類の食品に存在する可能性があります。食中毒の予防に重要なことは、食品を適切に加熱し、適切な温度で保存し、また適切な衛生状態を維持することで、ウェルシュ菌の増殖と毒素の産生を抑制し、食中毒を予防することができます。

米やパスタなどの穀物

米やパスタなどの穀物は、特にウェルシュ菌による食中毒の原因となることが多いです。米やパスタなどの食品は、調理後に長時間適切な温度で保存されないと、ウェルシュ菌の胞子が発芽、増殖し、食中毒を引き起こす原因となります。

調理済みの肉類

調理済みの肉類も、ウェルシュ菌による食中毒の原因です。肉類は適切に加熱され、適切な温度で保存されない場合、ウェルシュ菌が増殖する環境となります。

スープやソース

スープやソースなどの液体食品も、適切な温度で保存されない場合には、ウェルシュ菌による食中毒のリスクが高まります。

野菜や果物

野菜や果物も、土壌からウェルシュ菌に汚染される可能性があります。

ウェルシュ菌の予防方法は?ウェルシュ菌対策・殺菌方法

ウェルシュ菌の予防方法

ウェルシュ菌による食中毒の予防や対策方法としては、食品を十分に加熱することです。また、食品を保存する場合は、素早く冷蔵庫に入れる、すぐに冷凍保存するといった対応を行うことが重要です。逆に、食品を常温保存してしまうと、ウェルシュ菌による食中毒のリスクが非常に高くなりますので、必ず冷蔵・冷凍による保存を徹底することが最大の予防方法です。

食品の十分な加熱

食品を十分に加熱することでウェルシュ菌を殺すことができます。ただし、ウェルシュ菌の胞子は非常に耐熱性であり、一般的な調理過程の加熱では死滅しない場合があります。

食品の冷蔵保存・冷凍保存

調理した食品はなるべく早く冷蔵庫や冷凍庫に保存し、5℃以下の低温で保存することが重要です。ウェルシュ菌は約10℃~60℃で増殖しますので、この温度範囲を避けることが重要です。

60℃で10分以上の再加熱

冷蔵・冷凍保存した食品を食べる前には、60℃で10分以上の加熱をすることが重要です。加熱は全体が均一に行われるように注意しましょう。

衛生的な食材の取り扱い

食材を取り扱う前や調理後に手をよく洗い、調理器具やキッチンの作業台などを清潔に保つことも重要です。

食材の新鮮さ

食材の新鮮さを保つことも、食中毒を予防するために重要です。食材を購入したら早めに調理・消費し、賞味期限や消費期限を確認するようにしましょう。

ウェルシュ菌食中毒の治し方や治療方法とは?

ウェルシュ菌食中毒の治し方や治療方法

ウェルシュ菌による食中毒の症状は、通常24時間~48時間程度で自然に治まることが多いです。ただ、重症の脱水症状や高熱、血便が伴う場合には、医療機関での診察が必要です。

水分と電解質の補給

嘔吐や下痢により、体内の水分と電解質が失われるため、それらを十分に補給することが重要です。市販の経口補水液やスポーツドリンクを使うことも有効です。乳幼児や高齢者は脱水症状が生じやすいので、特に注意が必要です。

十分な休息

免疫システムが感染と闘うためには、十分な休息が必要です。

消化に負担をかけない食事

食中毒の症状や体調が回復するまでは、胃腸に負担をかけない食事を心がけ、少しずつ食事を摂ることが良いでしょう。バナナやアップルソース、ご飯やトーストを食べるBRATダイエット(ブラットダイエット)がおすすめです。
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カレーの適切な保存方法は?

カレーの適切な保存方法

カレーを適切に保存するための基本的な方法は以下の通りです。冷蔵保存でも冷凍保存でも、カレーを再加熱する際はしっかりと熱を通すことが大切です。尚、再加熱は一度だけにしましょう。何度も繰り返し加熱をすると、食材が傷みやすくなったり、食中毒のリスクが高まる可能性があります。

カレーの冷蔵保存

1.カレーを完全に冷まします。温かいまま冷蔵庫に入れると、冷蔵庫内の温度が上がり、他の食品に影響を及ぼす可能性があります。
2.保存容器に移します。カレーを保存する容器は清潔であること、また密閉性があることが重要です。
3.冷蔵庫に入れます。冷蔵保存の場合、カレーは約2日~3日間保存可能です。

カレーの冷凍保存

1.カレーを完全に冷まします。
2.保存容器、又はフリーザーバッグに移します。冷凍保存をする場合、カレーが凍った時に広がらないようにスペースを残すことを忘れないでください。
3.冷凍庫に入れます。冷凍したカレーは1ヶ月程度の保存が可能です。

カレーの常温保存は何日まで大丈夫?

基本的にカレーの常温保存はNGと思っておくほうが良いでしょう。冬場の寒い時期であれば半日~1日程度は持ちますが、夏場の常温保存は菌が繁殖して食中毒のリスクが非常に高いため、絶対に常温保存ではダメです。すぐに冷蔵・冷凍保存をすることが日持ちさせる条件です。

また、カレーの食中毒の原因となるウェルシュ菌は10℃~60℃で増殖する特徴がありますので、カレーを保存する場合には10℃以下で保存するか、60℃以上の高温で保存することが正しい保存方法となります。

地域や場所にもよりますが、冬場の寒い時期は10℃以下になることが多く、カレーの常温保存でも食中毒になるリスクが低いのです。