コロナ後遺症とは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が治癒した後も、引き続き体調不良が続く状態を指します。これはロング・コビッド(Long COVID)とも呼ばれ、体調不良の種類や持続時間は人により大きく異なります。
コロナ後遺症の症状は、味覚障害や呼吸困難、集中力の低下や睡眠障害など、様々な症状が報告されています。コロナの後遺症は、COVID-19の重症化や軽症化とは必ずしも相関性がないため、軽症だった人でも後遺症に悩まされることがあります。
コロナ後遺症の症状とは?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の回復後に発生する可能性がある後遺症は、人によって大きく異なります。
また、新型コロナウイルスの後遺症は1つの症状だけではなく、異なる複数の症状を訴える人が多いことも特徴です。後遺症を感じる人の約8割の人は、同時に複数の症状を訴えています。
疲労感
コロナ感染者の多くが感じる後遺症で、非常に強い疲労感(クラッシュ)が長期間続くことがあります。
呼吸困難
COVID-19は肺に影響を及ぼすため、一部の人は回復後も呼吸困難や息切れ、せきを経験することがあります。特に運動をする時に顕著になります。
心臓の問題
COVID-19は心臓にも影響を及ぼす可能性があり、心筋炎や心臓の機能不全などの症状が出ることがあります。
関節痛や筋肉痛
コロナ後に持続的な筋肉痛や関節痛を感じることがあります。
味覚と嗅覚の異常
味覚や嗅覚が正常に機能しない、又は完全に失われることがあります。
記憶力や集中力の低下
COVID-19を発症した後に、集中力の欠如、倦怠感、記憶障害、頭痛、混乱、睡眠障害、頭のもや・思考力の低下(ブレインフォグ)を経験することがあります。
うつ病や不安感などの精神問題
コロナ感染後に、うつ病や不安、睡眠障害などの精神的健康問題が発生することがあります。
髪の脱毛・抜け毛(ヘアロス)
一部の人は、コロナ回復後に数ヶ月で髪の脱毛を経験します。
下痢や吐き気などの胃腸の不快感
コロナの後遺症として、胃痛、下痢、吐き気なども報告されています。
コロナの後遺症が残る確率や割合は?
コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症については、まだ研究が進行中の段階で、詳細な割合を示す統計は変動する可能性があります。また、後遺症の程度や種類、持続時間は人により大きく異なり、どの症状を後遺症と定義するかによっても割合は変わります。
コロナ後遺症は6割以上
現状では、新型コロナウイルス感染症の発症から半年後で6割以上の人が何らかの症状を訴えています。また、発症から1年後でも5割近くの人で症状が残っているとのデータがあります。
しかし、これらの数字はあくまで一部の研究に基づいたもので、全体像を反映しているとは限りません。新型コロナウイルスは2020年に初めて発見され、その長期的な影響については今も研究が進められています。
コロナの後遺症で1番多い症状は?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症で1番多い症状は嗅覚障害です。続いて倦怠感や味覚障害、呼吸困難となります。また、集中力の低下(ブレインフォグ)も多く、睡眠障害や記憶障害を訴える人もいます。
ブレインフォグとは?
ブレインフォグとは、主に認知的な機能に影響を及ぼす症状の一つで、思考の混乱、集中力の低下、記憶力の問題などを含みます。ブレインフォグは頭が霧に包まれているかのような感覚を伴います。ブレインフォグは特定の疾患や病状に特有のものではなく、多くの健康問題や生活習慣の結果として生じる可能性があります。
ブレインフォグの原因
現時点では、ブレインフォグの原因は明らかになっていませんが、ウイルスの直接的な影響、炎症反応、ストレス、睡眠不足、栄養失調など、様々な要素が関与している可能性があります。また、COVID-19による重症化や入院などの経験は、ストレスや精神的な影響をもたらし、これがブレインフォグの原因となる可能性もあります。
コロナ後遺症の味覚障害や嗅覚異常はいつ治る?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による味覚障害の回復にかかる時間は、個々の状況に大きく依存します。
コロナの味覚障害や嗅覚異常は何日続く?
味覚障害や嗅覚異常は、一般的には感染後1ヶ月程度で回復する人が多くなっています。しかし、一部の人は半年以上続くこともありますし、最も長い事例では味覚や嗅覚の異常が1年以上も続いているといった報告もあります。
その理由の一部は、新型コロナウイルスが嗅覚を司る神経細胞に影響を及ぼすことで、間接的に味覚にも影響を及ぼすためです。これらの細胞が回復するまでには時間がかかる場合があります。
コロナの後遺症になりやすい人は?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症(ロングCOVID)は、症状に関わらず、すべての年齢層の人に影響を及ぼす可能性があります。しかし、特定の要素が後遺症のリスクを高める可能性があることが研究で示されています。
ただ、後遺症についての理解はまだ進行中で、これらの要素やその他の要素がどの程度影響を及ぼすかについての詳細な研究が必要です。
病状の重さ
重症化したCOVID-19患者は、より長期間に渡る回復を必要とする傾向があり、その結果、後遺症のリスクが高まる可能性があります。
年齢による影響
高齢者はCOVID-19からの回復に時間がかかり、後遺症になりやすいと考えられています。
基礎疾患の有無
心臓病、糖尿病、肺疾患などの基礎疾患を持つ人は、COVID-19の後遺症のリスクが高いとされています。
性別による影響
一部の研究では、女性がコロナ後遺症を経験する可能性が男性よりも高いことが示されています。
コロナの後遺症はなぜ起こる?コロナ後遺症の原因は?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症の原因については、まだ完全に理解されていませんが、いくつかの理論が提唱されています。
尚、下記の理論は独立したものではなく、それぞれが組み合わさって後遺症を引き起こす可能性があります。さらに、これらの理論は全ての後遺症を説明するわけではなく、また後遺症の原因は個々の病態や個々の患者の身体状況によるところが大きいと考えられています。
今後の研究によって、新たな理解が得られることが期待されています。
新型コロナウイルスの直接的な影響
新型コロナウイルスが体内の細胞に直接影響を及ぼし、特に肺や心臓などの臓器にダメージを与えることが考えられます。これは肺に永続的な瘢痕組織の形成を引き起こし、呼吸困難の原因となることがあります。
サイトカインストームによる原因
ウイルスに対する身体の免疫応答が過剰になり、炎症や臓器の損傷を引き起こす可能性があります。この過剰な免疫応答はサイトカインストームと呼ばれ、一部の重症COVID-19患者に見られます。
血栓の形成による原因
新型コロナウイルス感染症は、血液の凝固を促すことが知られています。これにより血栓が形成され、心筋梗塞や心臓発作、脳卒中のリスクが増える可能性があります。
慢性的な炎症や免疫反応
一部の患者ではウイルスが体内に長期間残存し、慢性的な炎症や免疫反応を引き起こす可能性があります。
身体的・精神的ストレス
病気とその治療、隔離や社会的な影響など、COVID-19感染がもたらす身体的・精神的ストレスも後遺症の一因となる可能性があります。
コロナ後遺症の対策や治療薬・対処方法は?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症は人によって異なる症状が見られ、その対処法や治療方法も個々の症状や患者の状態によります。現時点では、後遺症を治すための特定の治療法は確立されていませんが、一般的な対策をいくつか示します。
休息と自己管理
適度な休息とストレス管理は、体調の回復にとても重要です。適切な睡眠、バランスのとれた食事、軽度から中程度の運動などが推奨されます。また、アルコールやカフェインの摂取は控えめにすることが推奨されます。
対症療法
具体的な症状に対して、医師の指導の元で薬物を用いることがあります。たとえば、息切れに対しては呼吸器疾患の薬が、疼痛に対しては鎮痛剤が使われることがあります。
リハビリテーション
身体的な筋力の低下や呼吸困難などの後遺症に対する対策として、物理療法や作業療法が有効です。
心理的なサポート
長期に渡る症状は、精神的にもストレスフルです。カウンセリングや心理療法は、そのストレスや不安を軽減するのに役立つ可能性があります。
生活習慣の見直し
健康的な食事、適度な運動、十分な休息といった基本的な健康習慣は、体調を管理し、回復を促進する上で非常に重要です。
慢性疲労症候群(CFS)のアプローチ
エネルギー管理や身体的、心理的、社会的なサポートといった、慢性疲労症候群の管理方法が参考になることがあります。
ゾコーバの服用
塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」を、コロナの後遺症の治療薬として服用するという方法があります。現在はまだ治験の段階ですが、ゾコーバを服用した人の後遺症の症状が45%下がったという報告があります。また、集中力や思考力の低下、物忘れなどの神経症状が出るリスクも33%下がったと報告されています。
ファイザーのパキロビッド
ファイザー社のパキロビッドという飲み薬についても、コロナ後遺症とされる症状の多くで発症リスクが下がったと報告されています。
ただし、新型コロナウイルス感染症の後遺症のメカニズムは、まだ解明されていません。塩野義製薬のゾコーバやファイザーのパキロビッドも、本当に効果があるのかどうかは不明です。数ヶ月後、数年後には別の治療薬が発表される可能性もあります。
新型コロナウイルス感染症は、現在も世界中で後遺症の研究が進められていますので、今後の研究結果に期待されます。
サイトカインストームとは?
サイトカインストームとは、体の免疫システムが過剰に反応し、大量のサイトカイン(免疫細胞が産生する、細胞間通信を助けるタンパク質)が放出される状態を指します。この結果、体内の炎症反応が制御不能となり、組織や器官への重大なダメージを引き起こすことがあります。
サイトカインストームと新型コロナウイルス感染症の関係
サイトカインストームの現象は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や重症インフルエンザ、エボラ出血熱、SARS(重症急性呼吸器症候群)などの重症感染症だけでなく、一部の自己免疫疾患や癌の治療中にも起こることがあります。
COVID-19におけるサイトカインストームは、特に重症化した患者において、肺や他の重要な器官への深刻なダメージ、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発症、最悪の場合、死に至ることがあります。このため、サイトカインストームの早期発見と管理はCOVID-19の重症化を防ぐ上で重要です。
サイトカインストームの症状
サイトカインストームは、体の免疫応答が過剰になった結果、大量のサイトカインが放出されて炎症反応が過剰になる状態を指します。この過剰な反応は、組織や器官に重大なダメージを与え、多くの症状を引き起こす可能性があります。症状が現れた場合は、即座に医療専門家に相談することが重要です。
サイトカインストームの主な症状は、高熱やふるえ、疲労感、頭痛、食欲不振、吐き気や嘔吐、皮疹、心拍数の増加、低血圧、呼吸困難や胸の圧迫感、腎臓や肝臓の機能低下、意識の混濁などです。
サイトカインストームの治療方法とは?
サイトカインストームは、体の免疫システムの過剰な反応によって引き起こされるため、その治療は免疫応答を抑制することに焦点を当てます。
ステロイド薬
デキサメタゾンなどのステロイド薬は、強力な抗炎症効果を持つため、免疫システムの過剰反応を抑制するために用いられます。
免疫抑制薬
特定の免疫抑制薬は、免疫応答を抑制することによりサイトカインストームを管理するために使用されることがあります。
サイトカイン阻害薬
これらの薬は特定のサイトカインに対して働き、その放出を抑制します。たとえば、トシリズマブはIL-6受容体阻害薬で、COVID-19に関連したサイトカインストームの治療に用いられることがあります。
対症療法
サイトカインストームが引き起こす高熱、低酸素症、低血圧などの症状を緩和するための治療も行われます。