肥満症とは、食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足などによって肥満になり、高血圧や糖尿病、心筋梗塞や脳梗塞、脂肪肝や脂質異常症などの11種類の健康障害が1つ以上ある場合、合併症を起こしやすい内臓脂肪の蓄積がある場合に肥満症と診断されます。肥満症と診断された場合は、減量による治療の対象となります。
日本肥満学会が定める診断基準では、肥満症はBMIが25以上で11種の合併症が1つでも該当する場合です。BMIが35以上になると高度肥満症となり、すぐに治療が必要と診断されます。
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肥満症の基準やガイドライン
肥満による11種類の健康障害(合併症)とは、日本肥満学会が定める肥満症の定義です。肥満症はBMI(ボディマス指数)が25以上で、11種類の合併症のうち、1つ以上に該当する場合に、肥満症と判断されます。
尚、メタボリックシンドロームは、男性が腹囲85cm以上、女性が腹囲90cm以上で、中性脂肪が150mg/dL以上の場合、空腹時血糖が110mg/dL以上の場合などの3つの項目の内、2つ以上に該当するとメタボリックシンドロームと診断されます。
そのため、BMIが25以下でも腹囲が基準値を超え、2つ以上の項目に該当するとメタボリックシンドロームとなります。
肥満による11種の健康障害
1.耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
2.脂質異常症
3.高血圧
4.高尿酸血症・痛風
5.冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症
6.脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作(TIA)
7.脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患/NAFLD)
8.月経異常、不妊
9.睡眠時無呼吸症候群(SAS)・肥満低換気症候群
10.運動器疾患:変形性関節症(膝、股関節)・変形性脊椎症、手指の変形性関節症
11.肥満関連腎臓病
肥満症のBMIの基準値
18.5未満:低体重(やせ)
18.5~25未満:普通体重
25~30未満:肥満(1度)
30~35未満:肥満(2度)
35~40未満:肥満(3度)
40以上:肥満(4度)
BMIの計算方法
BMIの計算方法は「体重kg÷(身長m)2」です。身長が170cmで体重が70kgの人は、1.7×1.7=2.89、70÷2.89=24.221となり、BMIでは普通体重ということになります。
肥満症のガイドラインでは、BMIが25以上(肥満1度~2度)の人が対象となります。BMIが35以上の高度肥満症の人は、非常に危険な状態と判断され、減量治療や薬物治療などを行う流れとなります。
肥満と肥満症の違い
肥満と肥満症は、両方とも体内の脂肪が過剰に蓄積し、それが健康に影響を及ぼす状態を言います。両者は同義として使われますが、一部の文脈では、肥満は太っている状態を指す言葉で、肥満症は医学的な観点から見た病的な状態を指す言葉です。
具体的な基準は、一般的にはBMI(ボディマス指数)を用いて判断されます。BMIは、体重(kg)を身長(m)の二乗で割った値で計算され、その数値によって体重の状態が評価されます。
肥満症とメタボリックシンドロームの違い
肥満症とメタボリックシンドロームの違いは、基準となる数値の違いとなります。
肥満症は11種類の健康障害のうち、1つ以上に該当し、BMIが25以上の場合に肥満症と診断されます。メタボリックシンドロームは腹囲の基準を超えた人で、血圧、血糖値、中性脂肪・コレステロールの3つの数値のうち、2つ以上が該当すると、メタボリックシンドロームとなります。
また、メタボリックシンドローム予備軍の基準としては、腹囲が基準値以上で3つのうち、1つでも当てはまると、メタボリックシンドロームの予備軍と判断します。
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肥満症の症状とは?
肥満症の症状は、体重の増加と体脂肪の過剰な蓄積という形で表れます。しかし、これらの症状は目に見える変化としてだけでなく、身体の内部での様々な変化としても表れます。
呼吸困難
体重が増えると、普通の活動でも呼吸が困難になることがあります。また、肥満の人は睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まります。
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倦怠感
体重の増加は、日常生活の活動による疲労感を増加させる可能性があります。
関節痛
体重が増加すると、特に重量を支える膝や股関節などに過度の負荷がかかり、痛みを引き起こすことがあります。
高血圧や糖尿病、心臓病などのリスク増加
肥満は、高血圧、糖尿病、心臓病などの慢性疾患のリスクを増大させます。
肥満症のチェックリスト
肥満のセルフチェックは、主に自己の体重と生活習慣を評価することで行います。
下記の項目をチェックすることで、肥満になるリスクを把握し、適切な対策を講じることができます。しかし、このチェックリストは一部の要素を考慮に入れたものであり、全体的な健康状態を評価するには医療専門家との相談が必要です。
BMIの数値が基準を超えている
BMIは22が健康的な数値とされています。そのため、BMIが25以上であれば肥満症、BMIが35以上であれば高度肥満症とされます。
ウエストサイズの測定
ウエスト周囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上の場合は、内臓脂肪が多く蓄積されていると診断されます。
飲食習慣
高カロリー食品の摂取量、食事のバランス、アルコール摂取の頻度、外食の頻度などを評価します。
運動習慣
一日の大部分を座って過ごすか、定期的に適度な強度の運動をしているかを評価します。
健康状態
高血圧、糖尿病、高コレステロールなどの健康問題があるか、又は肥満に関連した症状(たとえば呼吸困難、関節痛、早怠感など)があるかを評価します。
生活習慣
睡眠時間、ストレスレベル、喫煙やアルコールの摂取習慣などを評価します。
肥満症の原因とは?
肥満症の主な原因は、エネルギーの摂取と消費のバランスが崩れ、摂取カロリーが消費エネルギーを上回ることです。これにはいくつかの要因が関与しています。これらの要素は相互に作用し合い、個々の肥満の状況を形成します。そのため、肥満症の治療や予防には全ての要素を考慮に入れたアプローチが必要です。
食生活の乱れによる原因
過度の高カロリー食品の摂取や飲食のバランスが崩れた食生活は、肥満の主な原因の一つです。
運動不足による原因
定期的な身体活動が不足すると、摂取したエネルギーを消費できず、体脂肪として蓄積します。
遺伝による原因
遺伝的要素も肥満に影響を与えます。肥満の親を持つ人は、親が肥満でない人に比べて肥満になりやすい傾向があります。
社会的・環境的要因
生活環境や社会構造が、肥満のリスクを増加させる可能性があります。たとえば、安価な高カロリー食品の利用、身体活動の機会の少なさ、ストレスや睡眠不足などがあります。
特定の疾患による原因
クッシング症候群や多嚢胞性卵巣症候群などの特定の疾患は、肥満のリスクが増加する場合があります。
服用している薬による原因
ステロイドや抗精神病薬などの特定の薬物の使用は、肥満のリスクを増加させることがあります。
肥満症の予防や対策方法
肥満症の予防には、健康的な食事と適度な運動を維持し、適切な体重を保つことが重要です。
健康的な食事
全粒穀物、果物、野菜、低脂肪の乳製品、魚、鶏肉などの良質なタンパク質を中心とするバランスの良い食事を心がけてください。また、塩分や砂糖、飽和脂肪酸の摂取を控えめにしましょう。
適度な運動
身体活動は肥満を予防し、体重を管理する上で非常に重要です。週に150分以上の中程度の運動、又は75分以上の激しい運動を目指し、筋力トレーニングも週に2回以上行いましょう。
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アルコールの適切な摂取
アルコールは高カロリーであり、過度の摂取は肥満のリスクを高めます。適切な摂取量を守りましょう。
ストレスと睡眠の管理
ストレスと睡眠不足は食事や運動の習慣に影響を及ぼし、肥満のリスクを高める可能性があります。リラクゼーション技術や良好な睡眠習慣を維持することが重要です。
肥満症を改善する食事メニューとは?
肥満症を改善する食事メニューは、低カロリーで栄養バランスが良く、飽和脂肪や砂糖の少ない食品を中心にしたものです。また、日本食のメニューは、低カロリーでバランスの取れた食事となっていますので、肥満症の改善に最適な食事と言えます。下記に、一日のメニュー例を記載します。
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肥満症改善の朝食の献立
納豆とごはん
味噌汁(豆腐とわかめ入り)
刺身(鮪やサーモンなど)
野菜の漬物
肥満症改善の昼食の献立
野菜たっぷりの和風パスタ(全粒粉のパスタ使用)
さっぱりとした小鉢(ほうれん草のおひたし、きんぴらごぼうなど)
果物(リンゴ、みかんなど)
肥満症改善の夕食の献立
ごはんと海苔
白身魚の照り焼き
味噌汁(しじみ、あさりなど)
煮物(かぼちゃ、にんじん、大根など)
豆腐のサラダ(胡麻ドレッシング)
肥満症の治療方法は?
肥満症の対処法や治療方法は、食事、運動、行動変化の3つの主要な要素を中心に行われます。しかし、これらの方法が効果を発揮しない場合や重度の肥満の場合は、薬物療法や外科手術を検討することもあります。
ダイエットと栄養管理
健康的な食事習慣を維持し、高カロリーな飲食の摂取を制限します。低カロリーダイエットや特定の食品を摂取することに焦点を当てたダイエットなど、様々な方法があります。
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運動と身体活動
定期的な運動は肥満症の治療において重要です。これには、ウォーキングやジョギング、自転車などの有酸素運動や筋力トレーニングが含まれます。
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行動変容療法
心理療法やカウンセリングを通じて、健康的な食事や運動の習慣を維持するためのモチベーションや技術を学びます。
薬物療法による治療
体重管理のための薬を用いることもあります。これらの薬は医療専門家の監督下で使用され、食事と運動のプログラムに加えて用いられます。
外科手術による治療
重度の肥満の場合や他の治療法が効果を発揮しない場合は、バリアトリック手術が選択肢となることがあります。これには胃バンド手術、胃切除、バイパス手術などがあります。