鉄欠乏性貧血とは

鉄欠乏性貧血とは、体内の鉄分が不足して赤血球に含まれるヘモグロビンが十分に作られない重度の貧血状態を指します。赤血球は酸素を体の各部位に運ぶ役割を果たすため、その数が減少すると酸素供給が十分に行われず、様々な症状が出ることがあります。

鉄欠乏性貧血の症状には、疲労感、息切れ、頭痛、手足のしびれ、冷えなどがあります。重度の鉄欠乏性貧血では、爪が薄くなったり、舌が赤く腫れたりすることもあります。

鉄欠乏性貧血の初期症状とは?

鉄欠乏性貧血の初期症状

鉄欠乏性貧血の初期症状は、軽度の疲労感や顔色の悪さ、集中力や思考力の低下といった症状が現れることがあります。体内の鉄分がさらに低下すると、より重篤な症状に進行する可能性があります。

軽度の疲労感

軽度の疲労感は、体が酸素を十分に運ぶための赤血球を十分に生成できなくなるために起こります。

集中力の低下

酸素供給が不足すると、思考力や集中力が低下することがあります。

顔色の悪さ

赤血球が酸素を運ぶ能力が低下すると、皮膚が青白くなり、顔色が悪くなります。

鉄欠乏性貧血を放置するとどうなる?

鉄欠乏性貧血を放置するとどうなる

鉄欠乏性貧血を放置すると、免疫力の低下やパフォーマンスの低下、早産のリスクや産後うつのリスクを高める場合があります。そのため、鉄欠乏性貧血の症状がある場合や自分が鉄欠乏性貧血を発症している可能性があると思われる場合は、医療専門家に相談し、必要な検査と治療を受けることが重要です。

疲労感やだるさ

身体が酸素を各組織に適切に運ぶことができないため、持続的な疲労感が起こります。

免疫機能の低下

鉄分は免疫系の機能に重要であるため、鉄欠乏は感染症への抵抗力を弱める可能性があります。

学習能力や仕事能力の低下

鉄欠乏性貧血は集中力を低下させ、思考力や学習能力を低下させる場合があります。これにより、学校や職場でのパフォーマンスが低下することもあります。

早産や産後うつのリスク

妊娠中の鉄欠乏は、早産や低出生体重児のリスクを増加させる可能性があります。また、出産後の母親の鉄欠乏は、産後のうつ病のリスクを高める場合もあります。

心不全のリスク

酸素が不足すると、心臓は血液をより早く送ることでこれを補おうとします。酸素不足は心拍数が増加し、長期的には心不全を引き起こす可能性があります。

鉄欠乏性貧血の精神症状とは?

鉄欠乏性貧血の精神症状

鉄欠乏性貧血は、身体的な症状だけではなく、精神的な症状を引き起こすこともあります。鉄欠乏性貧血が引き起こす可能性のある精神的な症状には、うつ病や記憶力の低下、イライラや無気力感などがあります。

ただ、これらの精神的な症状は、個々の体調や状況により異なりますので、すべての人に見られるわけではありません。また、うつ病やイライラなどの症状が見られる場合でも、必ずしも鉄欠乏性貧血が原因であるとは限りません。精神的な症状が見られる場合は、医療専門家に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

無気力感や気力の低下

体全体のエネルギーレベルが低下し、気分の低下や無気力を引き起こすことがあります。

うつ病などの気分障害

一部の研究では、鉄欠乏がうつ病のリスクを増加させる可能性があることが示唆されています。鉄は脳内の神経伝達物質、特にドーパミンとセロトニンの生成に関与しているため、そのバランスが乱れると気分障害を引き起こす可能性があります。

イライラや不安感

鉄欠乏性貧血は、不安やイライラ感を増加させる場合があります。

短期記憶障害

鉄欠乏性貧血は記憶力に影響を及ぼす可能性があり、特に短期記憶に影響を及ぼすことがあります。

鉄欠乏性貧血の女性の割合とは?女性に多い理由は?

鉄欠乏性貧血の女性の割合

鉄欠乏性貧血は、男性よりも女性に多く、特に月経のある20代~40代の女性に見られます。また、日本人女性の10人に1人は鉄欠乏性貧血を発症すると言われています。

月経による理由

女性は毎月の月経周期で血液を失い、月経によって鉄も失われます。これは鉄欠乏性貧血の最も一般的な原因の一つで、特に月経が豊富な20代~40代の女性や月経周期が非常に短い女性が多くなります。

妊娠による理由

妊娠中は、胎児の成長と発育を支えるために、さらに多くの鉄が必要となります。そのため、妊娠中や授乳期の女性は、鉄欠乏性貧血のリスクが高くなります。

鉄欠乏性貧血の症状をチェックするには?

鉄欠乏性貧血の症状をチェックするには

鉄欠乏性貧血の症状をチェックするには、頭痛やめまい、呼吸困難や心拍数の増加により動機や息切れ、浮腫みや顔面蒼白などの症状を確認します。また、めまいや耳鳴り、爪が反り返るスプーンネイルも起こります。

全身の倦怠感

鉄欠乏により酸素を体全体に運ぶ赤血球の数が減るため、身体はエネルギーを作り出すのに苦労します。

顔面蒼白

赤血球が酸素を運ぶ能力がさらに低下すると、顔面蒼白になることがあります。

頭痛やめまい

酸素が脳に十分に達しないと、頭痛やめまいが起こることがあります。

手足の冷たさ

鉄欠乏性貧血は血流を低下させる可能性があり、これにより手や足が冷たく感じることがあります。

呼吸困難

酸素供給が不足すると、身体は深呼吸をすることでその不足を補おうとします。

動悸や息切れ、浮腫みや立ちくらみ

心拍数の増加に伴い、動悸や息切れ、疲れやすさ、だるさ、浮腫や立ちくらみなどの症状が出てきます。

スプーンネイル・爪の異常

鉄欠乏性貧血の人は、爪が薄くなったり、くぼんだりすることがあります。

鉄欠乏性貧血の原因とは?

鉄欠乏性貧血の原因

鉄欠乏性貧血は、体内の鉄の量が不足することによって引き起こされます。鉄はヘモグロビンの成分であり、ヘモグロビンは赤血球内に存在し、酸素を体中に運ぶ役割を果たします。

鉄が不足するとヘモグロビンの生産が低下し、酸素を運ぶ能力が減少します。これが鉄欠乏性貧血の基本的なメカニズムです。

食事からの鉄分の不足

鉄は食物から摂取されます。肉類、特にレバーや赤肉、豆類、穀物、卵などに含まれています。これらの食品を摂取しないか、又は十分な量を摂取しない場合、鉄欠乏性貧血を引き起こす可能性があります。

吸収障害による原因

体が栄養素を上手く吸収できないセリアック病やクローン病などの消化器系の病状でも、鉄欠乏性貧血を引き起こす可能性があります。

手術や事故による出血

出血は鉄欠乏性貧血の一般的な原因で、これには月経や胃腸出血(潰瘍、大腸ポリープ、大腸がんなど)、手術や事故による出血などが含まれます。

妊娠による原因

妊娠中は鉄の必要量が増えるため、十分な鉄を摂取していないと鉄欠乏性貧血を引き起こす可能性があります。

鉄欠乏性貧血の予防法とは?

鉄欠乏性貧血の予防法

鉄欠乏性貧血は、赤身肉のヒレやランプ、豚レバーや鳥レバー、煮干しやシジミ、ひじきなどの鉄分の多い食材を食べることが予防になります。

鉄分の多い食品を食べる

鉄欠乏性貧血の予防には、食事から適切な量の鉄を摂取することが重要です。特にレバー、赤肉、魚、豆類、緑黄色野菜、全粒穀物、乾燥果実などが良い食材となります。また、ビタミンCは鉄の吸収を助けるので、柑橘類やストロベリー、ピーマン、ブロッコリーなどのビタミンCが豊富な食品を、鉄分を多く含む食事と一緒に摂取すると良いでしょう。

鉄剤の使用

食事だけで鉄分を十分に摂取することが難しい場合、又は妊娠中や重度の月経出血などの鉄欠乏のリスクが高い場合は、医師の指導の元で鉄剤を利用することがあります。

出血のコントロール

月経出血が過度であったり、胃腸からの慢性出血がある場合は、これらの出血をコントロールすることが重要です。医師と相談し、適切な治療法を探すことが必要です。

消化器系の疾患の治療

鉄は主に小腸から吸収されるため、小腸の健康を維持することが重要です。セリアック病やクローン病などの消化器系の疾患がある場合、これらの疾患の管理が鉄吸収に重要となります。

鉄分が多いおすすめの食べ物とは?

鉄分が多いおすすめの食べ物

鉄分が豊富な食品には、以下のようなものがあります。動物性食品からの鉄(ヘム鉄)は植物性食品からの鉄(非ヘム鉄)よりも、5倍~6倍も吸収率が高くなっています。そのため、植物性食品よりも動物性食品のほうがおすすめの食材と言えます。

また、ビタミンCは鉄の吸収を助けるため、オレンジやストロベリー、パプリカやブロッコリーなどのビタミンCを含む食品を一緒に食べることで、鉄の摂取量を最大化することが可能です。

牛肉や羊肉などの赤肉

牛肉や羊肉は特に鉄分が豊富です。
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鶏肉や魚

鶏肉や魚などの動物性食品も鉄分を含んでいますが、赤肉ほどではありません。

レバーや内臓肉

レバーや内臓肉には特に鉄分が豊富で、鶏肉のレバーや牛肉のレバーはおすすめです。

カキやエビなどのシェルフィッシュ

カキやホタテ、エビなどの貝類や甲殻類は、非常に鉄分が豊富です。

レンズ豆や大豆などの豆類

レンズ豆、大豆、ひよこ豆、黒豆などの豆類も鉄分が豊富です。
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ほうれん草や緑黄色野菜

ほうれん草、グリーンリーフ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜は鉄分が豊富です。

全粒穀物とシリアル

全粒穀物製品や鉄分を強化したシリアルも良い鉄の供給源です。
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鉄分が多いおすすめの飲み物とは?

鉄分が多いおすすめの飲み物

鉄分が豊富な飲み物には以下のものがあります。ただ、飲み物だけで鉄分を摂取するのは非常に難しく、バランスの良い食事から摂取することが最も効果的です。

豆乳

鉄分含有量は製品により異なりますが、一部の豆乳には鉄分が豊富です。また、鉄分が強化されている豆乳もあります。

トマトジュース

トマト自体にはそれほど鉄分は含まれていませんが、トマトジュースは比較的多くの鉄分を含んでいます。

ほうれん草やグリーンリーフのジュース

緑色の野菜は鉄分が豊富で、ほうれん草やグリーンリーフなどをジュースにすることで、鉄分を摂取することができます。また、ビタミンCを同時に摂取することで、体による鉄分の吸収が向上します。

鉄分強化のシリアルのミルク

鉄分が強化されたシリアルをミルクに入れて食べると、シリアルから溶出した鉄分がミルクに溶け込みます。そのミルクを飲むことで、鉄分を摂取することができます。

プルーンジュース

プルーン自体が鉄分を含むため、プルーンジュースも鉄分が豊富です。
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ビールやワイン

ビールやワインなどのアルコール飲料には少量の鉄が含まれていますが、過度の摂取は健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、適量を守るようにしてください。
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鉄欠乏性貧血によくない食べ物や飲み物とは?

鉄欠乏性貧血によくない食べ物や飲み物

鉄欠乏性貧血の人が避けるべき食べ物や飲み物は、鉄の吸収を妨げるものです。

コーヒーや紅茶などのカフェインを含む飲料

コーヒーや紅茶、一部のソフトドリンクに含まれるカフェインは、鉄の吸収を阻害する可能性があります。コーヒーなどの飲料は、鉄分を含む食事とは別の時間に摂取すると良いでしょう。
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乳製品

乳製品はカルシウムが豊富で、カルシウムは鉄の吸収を阻害する可能性があります。ただし、これは全ての乳製品を避けるべきという意味ではなく、乳製品と鉄分を同時に摂取するのを避けるべきです。
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全粒穀物や豆類

全粒穀物と豆類は鉄分を含んでいますが、フィチン酸という物質も含んでおり、これが鉄の吸収を阻害する可能性があります。これを防ぐために、全粒穀物や豆類は適切に調理(浸水、発酵、加熱など)し、ビタミンCと一緒に摂取することで、鉄の吸収を改善できます。

卵は鉄を含んでいますが、卵黄に含まれる物質が鉄の吸収を阻害する可能性があります。しかし、この影響は小さいため、卵を完全に避ける必要はありません。

鉄欠乏性貧血の対処法とは?鉄欠乏性貧血の治療方法

鉄欠乏性貧血の対処法

鉄欠乏性貧血の対処法や治療方法は、主に原因の特定と治療、及び鉄分の摂取量の増加です。

原因の特定と治療

鉄欠乏性貧血の最も一般的な原因は、鉄の摂取不足、吸収不良、又は出血です。したがって、鉄欠乏性貧血の根本的な原因を特定し、それを直接的に治療することが必要です。たとえば、出血が原因であれば、その出血源を止めることが求められます。胃腸の問題により鉄の吸収が妨げられている場合は、その問題を治療することが必要です。

鉄の摂取量の増加

鉄欠乏性貧血の治療は、鉄を豊富に含む食品の摂取や医師が処方する鉄分の補給薬の摂取により行われます。また、ビタミンCは鉄の吸収を助けるため、ビタミンCを含む食品を積極的に摂ることも効果的です。

鉄欠乏性貧血はどれくらいで治る?

鉄欠乏性貧血の治療期間は、その程度や原因により大きく異なります。鉄剤の治療が始まってから体調の改善を感じるまでには、通常数日から数週間かかります。しかし、ヘモグロビン値が正常範囲に戻るまでにはさらに時間が必要で、数週間から数ヶ月を要することが一般的です。

さらに、体内の鉄の貯蔵量を正常に戻すためには、ヘモグロビンレベルが正常になった後も鉄剤を続けて服用する必要があります。これは通常、数ヶ月から1年程度を要することが多いです。

しかし、これらは一般的なガイドラインであり、個々の状況により異なります。また、鉄欠乏性貧血の原因が何であるかによっても、その解決にかかる時間は変わります。たとえば、鉄の吸収不良を引き起こす長期的な健康問題がある場合、その問題が解決するまで鉄欠乏性貧血は改善しない可能性もあります。

鉄欠乏性貧血の薬の副作用とは?

鉄欠乏性貧血の薬の副作用

鉄剤は、鉄欠乏性貧血の最も一般的な治療方法の一つですが、一部の人はその副作用に悩むことがあります。

便秘や下痢、吐き気や嘔吐などの胃腸障害

鉄補給剤は、胃腸の不快感、胃痛、便秘、下痢、吐き気や嘔吐などを引き起こすことがあります。これらの副作用は薬を食事と一緒に摂取することで軽減されることがあります。

便の色の変化

鉄剤を摂取すると、便が黒くなることがあります。これは無害な現象であり、鉄剤の摂取を止める必要はありません。

過剰な鉄の摂取

鉄剤は正しく使用すれば安全ですが、過剰に摂取すると鉄過剰症を引き起こす可能性があります。これは稀な状況ですが、特に子供が誤って大量の鉄剤を摂取した場合には、重大な健康問題を引き起こす可能性があります。