ケトジェニックダイエットとは、体がケトーシスと呼ばれる状態になるように設計された食事プランです。ケトーシスは、体が炭水化物などの糖質ではなく、ケトン体をエネルギー源として使う状態を指します。
一般的なケトジェニックダイエットは、カロリー摂取の70%~75%が脂質、20%がタンパク質、5%~10%が炭水化物となるように管理されており、特に炭水化物の摂取を大幅に減らすことが目的です。
ケトジェニックダイエット(ケトン食、ケトン食療法)は、元々1920年代にてんかんの治療法として開発されましたが、近年では減量と体脂肪率の低下、インスリン感受性の向上、心血管疾患リスクの減少など、様々な健康効果が報告されています。
ただ、ケトジェニックダイエットは厳格な食事制限を伴うため、長期間続けるのは困難であるという問題があります。また、全ての人に適しているわけではなく、特に肝臓や腎臓、膵臓などの問題を抱える人や特定の代謝疾患を持つ人には推奨されていません。
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ケトジェニックダイエットのやり方とは?
ケトジェニックダイエットは、炭水化物の摂取を大幅に制限し、脂質の摂取を増やすことにより、体が脂質からエネルギーを得るようにシフトさせるダイエット方法です。
カロリー摂取の割合の調整
ケトジェニックダイエットでは、全体のカロリーのうち70%~75%を脂質、約20%をタンパク質、残りの5%~10%を炭水化物に分配します。ケトジェニックダイエットのやり方は、一般的な食事の配分とは大きく異なり、特に炭水化物の摂取を大幅に制限することが特徴です。
炭水化物の摂取量を減らす
ケトジェニックダイエットでは炭水化物の摂取を大幅に減らしますので、米やパン、パスタ、果物や砂糖などの炭水化物食品の摂取を控えます。
脂質を多く含む食品を摂取する
高脂質食品はケトジェニックダイエットの主要なエネルギー源となりますので、アボカド、ナッツ、種、乳製品、卵、肉、魚など、脂質を多く含む食品を選びます。また、オリーブオイルやココナッツオイルなどの健康的な脂質も積極的に取り入れます。
適量のタンパク質を摂取する
ケトジェニックダイエットではタンパク質の摂取も重要ですが、摂取量が多すぎるとケトーシスに影響を及ぼす可能性があります。そのため、肉、魚、卵、乳製品は食べ過ぎず、適量を摂ることが推奨されます。
繊維質の高い野菜を食べる
ブロッコリーやカリフラワーなど、炭水化物を含まない繊維質の高い野菜は、ケトジェニックダイエットでの炭水化物の摂取量を補うことができ、ビタミンやミネラルを補給し、食物繊維も摂取できます。
水分と電解質を補給する
ケトジェニックダイエットは体から水分が排出されやすくなるため、十分な水分補給と、ナトリウムやカリウムなどの電解質の補給が必要です。
ケトジェニックダイエットで食べていいもの
ケトジェニックダイエットは、脂質を中心に適度なタンパク質、そして最小限の炭水化物を含む食品が中心となります。
牛肉や豚肉などの肉類と脂肪分の多い魚
牛肉、豚肉、羊肉、鶏肉、七面鳥、野生のジビエ肉を食べます。また、サーモンやマグロ、サバなどの脂肪分が多い魚や海産物を積極的に摂取します。
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卵やバター・チーズなどの乳製品
ケトジェニックダイエットでは、卵やバター、チーズ、ホイップクリームなどの乳製品も積極的に摂ります。
アーモンドやクルミなどのナッツと種
アーモンド、クルミ、フラックスシード、チアシード、マカダミアナッツなども食べます。
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オリーブオイルやMCTオイルなどの健康的な油
ケトジェニックダイエットは、ココナッツオイル、アボカドオイル、エクストラバージンオリーブオイル、MCTオイルなども食べます。
炭水化物が少ない野菜
ブロッコリー、カリフラワー、ほうれん草、レタス、白菜、小松菜、キャベツなどの炭水化物が少ない野菜を食べます。また、脂肪分が高く、ビタミンとミネラルが豊富に含まれているアボカドも食べます。
イチゴやブルーベリーなどのベリー類(果物)
イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリーなどを食べます。ただし、イチゴやブルーベリーなどの果物は糖分があるため、摂取量には注意が必要です。
しょうゆ・塩・マヨネーズなどの調味料
ケトジェニックダイエットの調味料は、しょうゆ、塩、マヨネーズ、オリーブオイル、バター、胡椒、ハーブ、スパイスなどの砂糖(糖分)を含まないものを選びます。
ケトジェニックダイエットで食べてはいけないもの
ケトジェニックダイエットは、炭水化物の摂取を大幅に制限し、体をケトーシス状態に保つことを目指します。そのため、炭水化物が多い食品や糖分の多い食材を避けることが推奨されます。
ご飯やパン、パスタやシリアルなどの穀物製品
ケトジェニックダイエットでは、ご飯、パン、パスタ、シリアル、コーンフレーク、オートミール、クスクス、マフィンなど、炭水化物を多く含む食品は食べません。
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ハムやソーセージなどの加工肉・加工食品
ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉、ハンバーガーやフライドポテト、ピザやフライドチキンなどのファストフードの食品も、糖質が多く含まれている場合がありますので、出来る限り加工されていない食品を摂取します。
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大豆や黒豆、えんどう豆などの豆類
大豆、レンズ豆、黒豆、えんどう豆、ひよこ豆、ヒマワリの種などの豆類も食べません。
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大根やジャガイモ、サツマイモなどの芋類や根菜類
ジャガイモ、サツマイモ、大根、さといも、ニンジン、ごぼうなどの根菜類は食べません。
リンゴやブドウ、オレンジなどの果物
バナナ、マンゴー、パイナップル、リンゴ、オレンジ、ブドウなどは糖質が多い食材となりますので食べません。イチゴやブルーベリーなどのベリー類は糖質が比較的少ない果物となりますので、摂取量に気を付けて少量を食べます。
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砂糖や甘味料
砂糖、ブラウンシュガー、ハチミツ、メープルシロップ、アガベシロップ、コーンシロップなどは食べません。
ケトジェニックダイエットで飲んではいけないもの
ケトジェニックダイエットでは炭水化物の摂取を大幅に制限するため、糖分の多い飲み物は避ける必要があります。
ケトジェニックダイエット中の飲み物として適しているものは、水やミネラルウォーター、無糖のハーブティー、ブラックコーヒー、無糖の炭酸水などです。アルコールについては、糖分の少ないウォッカやテキーラ、ドライワインなどが一部許容されますが、量に注意する必要があります。
ソフトドリンクやジュース
コーラやサイダーなどの炭酸飲料、オレンジジュースやリンゴジュース、グレープフルーツジュースなどの果物から作られたジュースは糖分が多い飲料となりますので、ケトジェニックダイエットでは飲みません。砂糖を加えたコーヒーや紅茶なども飲みません。
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スポーツドリンクやエナジードリンク
スポーツドリンクやエナジードリンクも糖分が含まれていますので飲みません。
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糖質を含むアルコール飲料
ビールやカクテル、甘いワインなどの糖質を含むアルコール飲料は飲みません。
ケトジェニックダイエットの1日の食事例
ケトジェニックダイエットは、脂質を多くし、炭水化物を少なく摂取する食事法です。
下記の食事メニューは一例となりますので、ケトジェニックダイエットを始める際には、自分自身の目標やライフスタイルに合わせてカスタマイズすることが大切です。
朝食のメニュー
・バターで調理したスクランブルエッグ
・アボカド1個
昼食のメニュー
・グリルチキンのサラダ(ドレッシングはオリーブオイルとレモンジュース)
・ほうれん草、カリフラワー、キュウリ、オリーブ、フェタチーズをトッピング
夕食のメニュー
・オリーブオイルやバターで調理したサーモン(または牛肉や豚肉などのステーキ)
・チーズをトッピングしたブロッコリーやアスパラガスの蒸し物
・バターやチーズで味付けしたマッシュしたカリフラワー
デザートや間食のメニュー
イチゴやブルーベリー、ラズベリーなどの糖質が少ない果物を食べます。間食には、アーモンドやマカダミアナッツなどのナッツ類を何個か食べます。
飲み物のメニュー
水、炭酸水、ハーブティー、無糖のブラックコーヒーや紅茶など、砂糖を使わない飲み物を選択します。
ケトジェニックダイエットを実践する期間は?
ケトジェニックダイエットを実践する期間は、個々の目標、体調、健康状態などによりますが、体重減少や血糖コントロール、脳の機能改善など、特定の目標を達成するために数週間から1ヶ月ほど行います。長くても2ヶ月~3ヶ月程度と考えておくと良いでしょう。
ケトジェニックダイエットを開始する前や長期間に渡って続ける場合は、医療専門家や栄養士と相談することが重要です。
ケトジェニックダイエットの戻し方
ケトジェニックダイエットから通常の食事に戻す際には、段階的に炭水化物を摂取し、体の反応を観察することが推奨されます。突然、大量の炭水化物を摂取すると、一時的に体重が増えたり、消化器系の不快感が生じる可能性があるからです。
ケトジェニックダイエットの効果やメリットとは?
ケトジェニックダイエットは、いくつかの健康面で有用な効果をもたらすことが科学的に示されています。
体重の減少
ケトジェニックダイエットは、体重減少の助けになることが多くの研究で示されています。脂肪を主なエネルギー源として使用することで、体脂肪が減少する可能性があります。
血糖値の改善
炭水化物の摂取を大幅に制限することで、血糖値の上昇を抑えることができます。特に2型糖尿病やインスリン抵抗性のある人にとって有益です。
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脳機能の改善
ケトジェニックダイエットは、元々薬による治療が効かない難治性疾患のてんかん患者の治療法として開発されました。ケトン体は脳にエネルギーを供給し、一部の研究では認知機能の改善が報告されています。
心血管疾患リスクの改善
ケトジェニックダイエットは、善玉コレステロールのHDLコレステロールを増やし、悪玉コレステロールのLDLコレステロールを減らす効果があるとされ、心血管疾患のリスクを下げる可能性があります。
がんの予防・がん治療の補助
初期の研究では、ケトジェニックダイエットががんのリスクを低減し、がん治療の一部として機能する可能性が示唆されています。
ケトジェニックダイエットの副作用やデメリットとは?
ケトジェニックダイエットには数多くの健康上のメリットがある一方で、いくつかのデメリットや注意点、副作用も存在します。
ケトフルーの副作用
ケトジェニックダイエットの開始直後の数日間は、炭水化物の摂取を大幅に減らすことで、体がエネルギー源として脂肪を使用する状態へと適応する期間であるため、一時的に頭痛、疲労、めまい、不安、便秘などのケトフルーと呼ばれる症状を経験することがあります。
栄養素の不足
ケトジェニックダイエットは炭水化物を大幅に制限するため、果物や穀物、豆類などの重要な食品群の摂取量が減少します。そのため、ケトジェニックダイエットは食物繊維やビタミン、ミネラルなどの栄養素が不足することがあります。
便秘などの消化器系の問題
ケトジェニックダイエットで食物繊維の摂取量が減少すると、便秘や他の消化器系の問題を引き起こす可能性があります。
継続することが難しい
ケトジェニックダイエットは制限が特に厳しいダイエットのため、長期間続けることが難しいと感じる人がいます。また、食事制限が厳しいため、ダイエット後のリバウンドのリスクが高まる可能性があります。
特定の疾患がある人、妊娠中や授乳中の女性のリスク
肝臓疾患、膵臓疾患、脂質異常症、食事障害のある人や妊娠中・授乳中の女性は、ケトジェニックダイエットを開始する前に医療専門家と相談することが重要です。
長期的な健康への影響
長期間に渡るケトジェニックダイエットの影響は、まだ完全には明らかになっていません。一部の専門家は、長期的な炭水化物の制限が骨密度の低下やビタミン・ミネラルの不足、肝臓への負担、心臓病リスクの増加など、健康に悪影響を及ぼす可能性があると警告しています。
ケトフルーとは?
ケトフルーとは、ケトジェニックダイエットを開始した際に起こる一時的な副作用で、身体がケトーシスという新しい代謝状態に適応する過程で生じます。
ケトフルーの症状
頭痛や吐き気、下痢や便秘、イライラ、疲労感、集中力の低下、睡眠障害、筋肉の痛みや痙攣、喉の渇きや脱水、頻尿などの症状が出ます。
ケトフルーはいつまで続く?
個人差にもよりますが、ケトフルーの症状は、通常1週間~数週間で消えていきます。体が新しい代謝状態に適応すると、多くの人はエネルギーが増え、集中力が改善し、全体的に気分が良くなると報告しています。
ケトフルーの対策や対処法
ケトフルーの症状を緩和するには、十分な水分補給と電解質の補給が重要です。魚やアボカド、ナッツや種子などを食べることで補給できます。また、適度な運動や十分な睡眠も、ケトフルーの症状を軽減するのに役立つことがあります。