吃音とは

吃音とは、話をする際の最初の言葉に詰まったり、一音を繰り返したり、言葉がすらすらと出てこない発話障害を指します。吃音(きつおん、どもり)とも言います。

吃音の原因は完全には明らかにされていませんが、遺伝的要素、神経生理学的要素、又は社会的、心理的ストレスなどが絡んでいる可能性があると考えられています。吃音の多くは子供の頃に始まりますが、成人でも発症することがあります。

吃音・どもりの初期症状や特徴は?

吃音の初期症状や特徴

通常、吃音は子供の言語が発達する段階で、初めて出現します。大人になってから発症することもありますが、これはトラウマや特定の神経疾患によるものです。

単語や音節の反復

吃音者は一部の単語や音節を繰り返すことがあります。たとえば、「今日」を「きょ、きょ、今日」と発音したり、「私は、は、は遊びたい」と言うことがあります。

発音の延長

音声や音節の発音が長引くことがあります。たとえば、「シ」の音を「シーーーー」と長く発音することがあります。

ブロック症状

吃音者は、話を始めるのが難しい場合があります。吃音者が特定の音を発音しようとすると、声道が閉鎖されて音が出ない状態を指します。

日によって吃音が出る

吃音者は問題なく話すことができる日もあれば、他の日には吃音が悪化することがあります。これはストレスや疲労、感情的な状況などにより影響を受けることがあります。

言葉や状況の回避行動

吃音者は特定の単語や状況を避けることがあります。それらの単語や状況が吃音を引き起こすか、又は悪化させると吃音者が感じるためです。

二次的な行動

吃音を隠すため、又は話すことを助けるために、吃音者はしばしば二次的な行動を示します。これには、顔の筋肉の緊張、体の動き、特定の単語やフレーズの使用が含まれます。

吃音・どもりのチェックリストやチェック項目は?

吃音・どもりのチェックリスト

吃音をチェックするための一般的なリストを下記に記載します。ただし、チェック項目に該当する場合でも、それが必ずしも吃音を意味するわけではなく、吃音の診断は医療専門家や言語療法士によって行われます。

吃音症のセルフチェック

1.一つの音節や単語を繰り返して話すことは吃音の一つの特徴です。
2.ある特定の音を通常よりも長く引き伸ばすことがあります。
3.話し始めるのに苦労したり、発話中に一時的な停止が見られる場合があります。
4.言葉を話す際に、急速にまばたきをしたり、目を閉じることが吃音者によく見られます。
5.発話中に顔の筋肉に異常な緊張が見られる場合があります。
6.ある特定の音や単語、又は話す状況を避ける傾向があります。
7.吃音者は同じフレーズを繰り返すことがあります。
8.話すことに関する過度の不安、恐怖、又は自己意識があります。
9.吃音者は特定の日や状況で流暢さが増減することがあります。

吃音のブロック症状とは?

吃音のブロック症状

吃音のブロック症状とは、話す際に音声が完全に停止する瞬間を指します。これは特に発話の開始時に起こることが多いです。ブロック症状は、話し手が特定の単語や音を発音しようとする時、声帯や口などの声道が一時的に閉じられ、音が出ない状態を表します。

顔や体の緊張

ブロック中には、話し手が言葉を発するために顔や体に顕著な緊張を示すことがよくあります。これは目に見える形で現れることもあるため、周囲の人にとっては、話し手が言葉を発するのに苦労していることがはっきりと分かります。

吃音のブロック症状は不快で、話すことに対する恐怖や不安を増大させることがあります。このため、ブロックを経験する人は特定の単語や音、又は話す状況全体を避ける傾向があります。

子供の吃音症の原因は?

子供の吃音症の原因

吃音症の原因は完全には理解されていませんが、遺伝や環境による原因、子供の発達障害による原因など、吃音は複数の要素が関与していると考えられています。

遺伝による原因

吃音症は家族内で一部遺伝的に傾向があると考えられています。つまり、親や兄弟姉妹が吃音症である場合、その人も吃音になる可能性が高まります。

神経生理学的要素

脳の発話に関与する部分が非吃音者と比較して、異なって機能する可能性があります。このことは、脳の画像化研究により示唆されています。

環境や心理的ストレス

ある状況や環境、又は高度なストレスが吃音の症状を引き起こすか、あるいは悪化させる可能性があります。しかし、ストレスが原因となるわけではなく、むしろ既存の吃音を悪化させる可能性があると考えられています。

発達要素

子供が言語を学び、より複雑な単語とフレーズを使うようになると、吃音の初期症状が出ることがあります。多くの場合、これは一時的なもので、子供が発話のスキルを磨くにつれて自然に消えていきます。

大人の吃音・どもりの原因は?

大人の吃音・どもりの原因

大人の吃音は、主に発達性吃音、神経性吃音、心因性吃音の3つに分けられます。

発達性吃音

発達性吃音は、幼少期に始まる最も一般的な形の吃音で、一部の人は成人になっても吃音が続くことがあります。発達性吃音の原因は完全には理解されていませんが、遺伝、神経生理学的要素、発達のスピードなどが関与していると考えられています。

神経性吃音(獲得性吃音、後天性吃音)

神経性吃音(獲得性吃音、後天性吃音)は、脳への損傷や障害(脳卒中、脳腫瘍、外傷など)が原因で、大人が突然吃音を発症する場合があります。神経性吃音は、発話を制御する脳の特定の部位が損傷した結果として発生します。

心因性吃音

心因性吃音は比較的珍しく、強い精神的なストレスやトラウマが吃音を引き起こす場合があります。心因性タイプの吃音は、心的なストレスが原因となる特定の事象が発生した後に急速に発症します。

吃音は発達障害?

吃音は発達障害

吃音は、特定の発達障害とは直接関連していません。しかし、言語や発話の発達に関わる問題として認識されます。通常、吃音は幼少期の言語習得の過程で現れ、子どもが成長するにつれて改善することもあります。

発達性吃音

一部の子供たちは言葉を学び、新しい単語やフレーズを使おうとする過程で、一時的に吃音を経験することがあります。これは、自己修正する過渡的なフェーズであり、発達性吃音と呼ばれます。この段階では、子供たちは言葉を形成する新しい方法を学んでいます。

永続的な吃音

吃音が長期にわたり続く場合、これは永続的な吃音として、治療を必要とする可能性があります。専門家の助けを借りることで、吃音に影響を受ける人は、発話の流暢性を改善し、自信を持ってコミュニケーションを取る能力を向上させることができます。

したがって、吃音は一般的な発達の一部として認識されることがありますが、それ自体が発達障害とは認識されていません。尚、吃音が他の発達障害(たとえば、自閉症スペクトラム症やADHD、注意欠陥・多動性障害)と共存することはあります。吃音の症状がある場合、それが他の発達上の問題の一部である可能性も考えられるため、専門家による評価が重要です。

吃音症は精神疾患?

吃音症は精神疾患

吃音症は、精神疾患ではなく、発話障害の一つとされています。特定の音、単語、フレーズを話す時に、反復、延長、またはブロック(音の完全な中断)を伴う言葉の流れの中断によって特徴付けられます。これは脳のスピーチを制御する領域の機能に関連していると考えられています。

精神的健康に影響を及ぼす

吃音症は、人間の精神的健康に影響を及ぼすことがあります。多くの場合、吃音はストレス、不安、恥ずかしさ、自己意識の高まり、自信の低下を引き起こす可能性があり、吃音症の感情的な困難は、吃音の症状を悪化させることもあります。

また、吃音はストレスや不安が原因で発生するわけではありません。これらの感情的な要素は吃音の症状を悪化させる可能性がありますが、吃音そのものの原因ではありません。

したがって、吃音は精神疾患ではありませんが、吃音が引き起こす感情的な困難は、吃音症の管理と治療の重要な部分を形成しています。

子供の吃音・どもりを治すには?

子供の吃音・どもりを治すには

子供の吃音を改善するための方法はいくつかありますが、その効果は個々の子供の年齢、吃音の重度、各家族の状況によります。

吃音の治療においては、完全に吃音を治すことよりも、子供が自信を持ってコミュニケーションを取る能力を強化することが目標とされます。それは子供が自分自身を表現し、他人と繋がる能力を高め、結果として生活の質を向上させることに繋がります。

そのため、子供の吃音の治療法を選ぶ際には、医療専門家や言語療法士と相談し、個々の子供のニーズに最も適したアプローチを見つけることが重要です。

言語療法

言語療法士による言語療法は、子供の吃音の治療の最も一般的な方法の一つです。言語療法士は、子供にスピーチの流暢性を改善するためのテクニックを教え、また子供が自信を持って話すことを支援します。

親の治療への参加

親が子供の吃音の治療に参加することは、非常に重要です。親は、家庭での会話環境を調整して、子供がゆっくりとプレッシャーなく話せるようにすることができます。また、親自身がゆっくりと明確に話すことで、子供の話し方の模範となることもできます。

吃音自助グループの利用

支援グループは子供が吃音について理解を深め、自己信頼を高めるのに役立つ場合があります。

大人の吃音・どもりを治すには?

大人の吃音・どもりを治すには

大人の吃音を改善するための方法は多岐に渡ります。また、大人の吃音を治す最善のアプローチは、吃音の重度、個々の生活状況、そして個々のニーズによります。

専門家による言語療法

言語療法士による治療や訓練を行います。吃音の治療は個々のニーズに応じてカスタマイズされ、発話のテンポの制御、発音技術、ストレス管理などを含む可能性があります。

認知行動療法(CBT)

吃音は、恥ずかしさや自己意識を高め、不安やストレスを引き起こす可能性があります。CBTは、これらの感情に対処し、吃音の症状を管理するのに役立つ心理療法の一形態です。

大人の吃音支援グループの活用

吃音の人が経験する困難を理解し、共有することで、自己信頼と理解を高めるのに役立つ場合があります。

電子デバイス

一部の電子デバイスは、吃音者が流暢に話すのを助けるように設計されています。これらのデバイスは、吃音者の自分の声を遅延させて再生するか、又は音調を変えることで、発話の流暢性を改善しようとします。

吃音・どもりの有名人は?

吃音・どもりの有名人

吃音の有名人では、アメリカ合衆国の第46代大統領 ジョー・バイデン氏は、吃音のある初のアメリカ大統領となりました。幼い頃から吃音で悩んでいたことを自伝で告白しています。

また、ダイ・ハードシリーズやアルマゲドン、シックス・センスなど、数々の大ヒット映画に出演している俳優 ブルース・ウィリスさん、トリプルグランドスラムを達成したプロゴルファーのタイガー・ウッズさん、イギリスのミュージシャン、エド・シーランさんも、子供の頃に吃音だったことを告白しています。

日本人では、第64代・65代内閣総理大臣の田中角栄氏は、幼少期から吃音症であったこと、また吃音症を克服したことを告白しています。また、俳優の丹波哲郎さん、アナウンサーの小倉智昭さんも子供の頃から吃音症に悩んでいたことを告白しています。

吃音症は天才病?

吃音症が天才病であるという概念は、科学的根拠に基づいてはいませんし、知能指数(IQ)などにも直接関連していません。しかし、吃音を持つ一部の人が優れた知識や技能を持つ事例が数多くあるのは事実です。

子供時代に吃音があると、相手に対して上手く言葉で伝えることができないため、より言葉を選びながら、身振り手振りなどで表現するようになります。また、吃音を克服するために繰り返し練習することも、その後の人生に大きなプラスに働くのではないかと考えられます。