
ナルコレプシーとは、過眠症の1つで、日中に突然我慢できないほどの強い睡魔に襲われ、眠ってしまう睡眠障害です。
ナルコレプシーは居眠り病とも呼ばれ、夜に寝ていても、昼間に異常な眠気による睡眠発作の症状が出る病気です。また、ナルコレプシーは食事をしている時に眠ったり、歩きながら眠ってしまったり、車の運転中に寝ることもあるため、非常に危険です。
ナルコレプシーはカタプレキシーという全身の力、あるいは膝の力や腰の力が抜けてしまう発作を併発することが多くあります。
ナルコレプシーの症状や特徴とは?
ナルコレプシーの主な症状は、日中の急激な眠気です。ただ、症状は全ての患者に一律に現れるわけではなく、症状の組み合わせや重度は個々に異なります。また、これらの症状が発現するスピードも個々の患者によります。
日中の眠気・強烈な睡魔
睡眠発作はナルコレプシーの最も一般的な症状で、日中に突然の睡眠発作に襲われることがあります。これらの睡眠エピソードは、通常数分から1時間まで続き、短時間のリフレッシュ睡眠で終わります。
カタプレキシー
強い感情的反応(特に笑い、驚き、怒りなど)を引き金に、筋肉が突然弛緩、又は力が入らなくなる状態を指します。カタプレキシーは数秒から数分続き、その間、話す能力や身体の動きが一時的に制限されることがあります。
睡眠麻痺
睡眠麻痺は、寝る前や目覚める時に、一時的に動くことができなくなる状態を指します。睡眠麻痺は数秒から数分続きますが、その間は非常に恐ろしい経験となることがあります。
幻覚
幻覚は、寝る前(入眠時幻覚)や目覚める時(覚醒後幻覚)に起こります。これらの幻覚は非常にリアルで、視覚的・聴覚的な経験となることがあります。
夜間の睡眠の中断
ナルコレプシーの患者は、一晩中何度も目が覚め、中断された睡眠を経験します。
ナルコレプシーのセルフチェック方法
ナルコレプシーは、特定の症状や体験に注意を払うことで、自己チェックが可能です。ただし、これらの症状は他の健康状態や睡眠障害にも見られるため、以下のチェックリストは診断ツールとして使用するべきではなく、医療専門家とのさらなる話し合いを行うべき可能性を示すものと考えてください。
ナルコレプシーのチェックリスト一覧
1.日中に頻繁に無抵抗な眠気を感じるか、又は突然眠ってしまうことがありますか?
2.強い感情的反応、特に笑い、怒り、驚きなどを引き金に、突然の筋肉の弛緩、又は力が抜ける経験をしましたか?
3.目覚めた直後や眠りに落ちる直前に、一時的に動けなくなる経験はありますか?
4.寝る前や目覚めた時に、視覚的、又は聴覚的な幻覚を経験しましたか?
5.一晩中、何度も目が覚め、中断される睡眠を経験していますか?
6.上記の症状が、学校や職場、社会活動、又は日常生活の他の側面に影響を及ぼしていますか?
これらの質問の多くに「はい」と答えた場合、又は症状があなたの生活に影響を与えている場合は、医療専門家に相談することを強く推奨します。
ナルコレプシーの初期症状とは?
ナルコレプシーは、思春期から若年成人期にかけて始まりますが、それが始まる具体的な時期は個々に異なります。また、症状は徐々に現れることが多く、最初の症状から全ての症状が現れるまでには数年かかることがあります。
一般的な症状としては、日中に抑制不能な睡眠発作に見舞われることです。また、笑い、驚き、怒りなどの感情を引き金に体の力が抜けてしまう症状もあります。
ナルコレプシーの確率
ナルコレプシーは10代の発症年齢が最も多く、中学生や高校生の年齢に集中しています。また、ナルコレプシーの確率は、世界的には2,000人に1人と言われ、日本では600人に1人の割合で発症するとされています。
ナルコレプシーになりやすい人は?
ナルコレプシーは全ての年齢、性別、人種、民族集団に影響を及ぼす可能性がありますが、いくつかの要素がそのリスクを高めることが示されています。
遺伝による発症
ナルコレプシーには遺伝的要素が関与していることが知られています。特定の遺伝子(HLA-DQB1*0602)を持つ人は、ナルコレプシーを発症するリスクが高まります。しかし、ナルコレプシーの遺伝子を持つすべての人がナルコレプシーを発症するわけではなく、遺伝だけが病気の原因ではないことに注意が必要です。
年齢(中学生や高校生)
ナルコレプシーの症状は、子供の後半から若い大人の初めにかけて現れます。多くの場合、10歳から30歳の間に初めての症状が出現します。
免疫応答
一部の研究では、ナルコレプシーは免疫系の異常な反応が脳内の特定の神経細胞を破壊し、それがナルコレプシーの症状を引き起こす可能性があると提唱しています。これはまだ完全に理解されていない領域であり、追加の研究が必要です。
ナルコレプシーの原因とは?
ナルコレプシーの正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、脳内の特定の神経細胞の損失に関連していることが知られています。これらの神経細胞はオレキシン、又はヒポクレチンと呼ばれる化学物質を産生します。オレキシンは覚醒状態を維持し、眠気を調節する役割を果たしています。
ただ、これらの理論は現在も進行中の研究の対象であり、ナルコレプシーの正確な原因とメカニズムを理解するためには、さらなる研究が必要です。
神経細胞の異常による原因
ナルコレプシーの患者の多くでは、脳内のオレキシンを産生する神経細胞が異常に少ないか、又は全く存在しないことが示されています。オレキシンが不足すると、眠気と覚醒のサイクルが適切に調節されず、ナルコレプシーの症状が引き起こされると考えられています。
免疫異常による原因
神経細胞がなぜ失われるのかはまだ明らかではありませんが、一部の研究では、これが免疫系の異常な反応によるものである可能性が示唆されています。つまり、免疫系が誤って自分自身の体の一部であるオレキシンを産生する神経細胞を攻撃し、破壊する可能性があります。
遺伝による原因
遺伝的要素もナルコレプシーの発症リスクに影響を及ぼす可能性があります。また、特定の遺伝子を持つ人は、ナルコレプシーを発症するリスクが高まるとされています。
これらの理論は現在も進行中の研究の対象であり、ナルコレプシーの正確な原因とメカニズムを理解するためにはさらなる研究が必要です。
ナルコレプシーを予防するには?
ナルコレプシーの発症を防ぐ具体的な方法は、現在のところ存在しません。ナルコレプシーは遺伝的要素や脳内の特定の神経細胞の減少と関連しているため、これらの要素をコントロールすることは困難です。
しかしながら、一度ナルコレプシーが診断された場合、その症状は様々な治療によって管理することが可能です。また、ナルコレプシーの症状を軽減するためには、生活習慣を改善することが推奨されます。
良好な睡眠習慣の確立
定期的な就寝時間と起床時間を設定し、充分な睡眠を確保します。
計画的な昼寝
短い昼寝を日中にスケジューリングすることで、日中の眠気を管理します。
健康的なライフスタイル
適度な運動、健康的な食事、そしてアルコールやカフェインの摂取を控えることも有用です。
ナルコレプシーが日本人に多い理由
ナルコレプシーが、日本人に比較的高い割合で見られるという統計的な証拠はいくつか存在します。しかし、これは必ずしも日本人がナルコレプシーになりやすいということを意味するわけではありません。
一部の研究では、ナルコレプシーの発症リスクが高まる可能性がある遺伝子型が、日本人の間で比較的一般的であることが示されています。
睡眠障害に対する認識の違い
ナルコレプシーの診断は複雑であり、地域や医療環境によって大きく影響を受けることがあります。日本では睡眠障害に対する認識が高まっており、より多くの人が診断を受けている可能性があります。これは、日本人の間でナルコレプシーがより高い割合で報告される理由の一部であるかもしれません。
ただ、ナルコレプシーが特定の人や集団に影響を及ぼす具体的な理由は、まだ完全には理解されていません。ナルコレプシーの原因やリスク要素を詳しく調べるための研究が現在も進行中です。
ナルコレプシーの対策や治療方法
ナルコレプシーは、現時点では完全に治すことはできませんが、適切な治療と管理によって症状を大幅に軽減し、日常生活の質を改善することが可能です。治療は主に薬物療法と生活習慣の改善となります。
薬物療法による治療
モダフィニルやメチルフェニデートなどの薬は、日中の眠気を抑制し、覚醒を促します。また、抗うつ薬としてトリプタノールやプロザック、ナトリウムオキシベートが、カタプレキシーの発作を抑制するのに役立ちます。
ヒポクレチン、又はオレキシンは、ナルコレプシー患者の脳内で欠乏している化学物質で、その補充により症状が改善する可能性があります。これは新たな研究分野で、試験段階の薬もあります。
生活習慣の改善による治療
ナルコレプシーは、規則正しい生活をすることが、症状を軽くする治療法の1つとなります。毎日同じ時間に眠り、同じ時間に起きるといった生活習慣を維持し、日中に10分~30分程度の短い睡眠を取ることも重要です。
また、飲酒やカフェインの摂取を控えることも、ナルコレプシーの対策・対処法の1つとなります。
カタプレキシーとは?
カタプレキシーとは、ナルコレプシーの主な症状の一つで、強い笑いや驚きなどの感情的な反応を引き金に、全身の力、あるいは膝や腰、顎やまぶたなどの力が抜けてしまう症状、又は金縛りなどの睡眠麻痺、幻覚や妄想などの入眠時幻覚を引き起こします。
カタプレキシーは数秒から数分続くことがあり、その間、患者の筋肉は一時的に弛緩し、ひどい場合には体が崩れ落ちることすらあります。カタプレキシーは言葉を話す能力や身体の動きを一時的に制限することがあります。カタプレキシーは急に起こり、それが終わると筋力は正常に戻ります。
カタプレキシーの原因
カタプレキシーは、ナルコレプシーと密接に関連しています。特にナルコレプシー1型の患者に最も一般的に見られます。
カタプレキシーの正確な原因は、まだ完全には解明されていませんが、ヒポクレチン、又はオレキシンと呼ばれる脳内の神経伝達物質の欠如と関連していると広く信じられています。ヒポクレチンは、覚醒状態の維持や睡眠と覚醒のサイクルの制御、さらには感情反応と筋肉の緊張度の調節に重要な役割を果たします。
カタプレキシーの症状とは?
カタプレキシーは、感情的な反応(喜び、驚き、笑いなど)によって引き起こされる突然の筋肉の脱力感や麻痺を特徴とする状態で、ナルコレプシーの一部の患者に見られます。
顔の筋肉に力が入らない
カタプレキシーは、まぶたの下垂や二重あご、口角の下垂、発話障害(話すのが難しくなる)として現れます。また、頭が前に垂れ下がる感じの頭部の落下もあります。
膝の力が抜ける、又は膝から崩れ落ちる
膝の力が抜けたり、膝から崩れ落ちることがあり、立っていることが難しくなることがあります。
全身の筋肉の麻痺
カタプレキシーの最も重度の場合、全身の筋肉が完全に抜けてしまい、倒れるか地面に座ることを強いられることがあります。