任意整理とは、個人や法人が自らの意思で負債を整理する方法の一つです。任意整理では、債務者が自らの債務を全て返済できない状況にある場合、債権者との間で交渉を行い、返済額や期間を見直し、債務の減額や分割払いなどの合意を目指します。
任意整理は、法的な手続きを伴わないため、個人再生や自己破産といった法的な手続きとは異なります。任意整理を行うことで、債務者は返済負担を軽減できることが期待できる一方、信用情報機関には「任意整理を行った」という記録が残ります。このため、任意整理後は、キャッシングやカードローン、クレジットカードや自動車ローンなどの信用取引や融資を受けることが難しくなります。
任意整理は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼して行うことが一般的です。専門家は、債務者と債権者との間で適切な交渉を行い、双方にとって最善の解決策を見つけ出すことを目指します。
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任意整理のメリットとは?
任意整理を行うメリットは、毎月の返済額を軽減できることです。また、個人再生や自己破産と比較すると、時間がかからず手続きを進めることができるメリットもあります。
ただ、任意整理を行うと、個人信用情報機関に任意整理を行った記録が残りますので、今後クレジットカードやキャッシングの利用、住宅ローンや自動車ローンを組むことが難しくなります。任意整理は債権者との合意が前提となるため、合意が成立しない場合もあります。
毎月の返済額が軽減できる
債務者は債権者と交渉し、返済額や期間を再設定することで、返済負担を軽減できる可能性があります。また、債務の減額や分割払いなどの合意ができる場合もあります。
時間や手間があまりかからない
任意整理は、法的な手続きではないため、手続きが比較的簡単で、手間や時間がかからないことが多いです。
財産を手放す必要がない
個人再生や自己破産と異なり、任意整理では自宅や車などの財産を手放す必要がないため、生活の継続が容易になります。
精神的な負担を軽減できる
借金の問題を解決することで、精神的なストレスやプレッシャーが軽減されることが期待できます。
任意整理のデメリットとは?
任意整理の最大のデメリットは、個人信用情報機関にネガティブな情報が登録されることと、今後のキャッシングやカードローン、クレジットカードやショッピングローンなどの利用が制限されることです。
任意整理は債務の減額が可能ではありますが、契約通りの返済が行えず、相手と合意をして毎月の支払額を減らす方法となります。そのため、個人信用情報機関に支払い能力に問題ありとして記録が残るのです。また、一定期間、クレジットカードやローンの利用ができなくなるデメリットもあります。
個人信用情報機関に記録が残る
任意整理を行うと、信用情報機関に記録されます。この記録は一定期間残り、今後のクレジットカードやキャッシング、ローンなどの取引・融資が難しくなることがあります。
日本国内の主な個人信用情報機関は、CIC(株式会社シー・アイ・シー)、JICC(株式会社日本信用情報機構)、KSC(全国銀行個人信用情報センター)の3つがあります。
金融会社との合意が必要
任意整理は債権者との合意が前提となるため、債権者が合意しない場合、任意整理が成立しないことがあります。
債務の完全免除が難しい
任意整理では、債務の減額や分割払いなどの交渉が行われますが、債務の完全免除が難しい場合が多いです。個人再生や自己破産といった法的手続きでは、債務の免除が認められることがありますが、任意整理ではそのようなケースは稀です。
弁護士や司法書士に支払う費用
任意整理を行うためには、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することが一般的です。弁護士や司法書士に任意整理を依頼すると、着手金や成功報酬などの費用が発生します。
任意整理の平均費用や相場はいくら?
任意整理の費用は、依頼する弁護士や司法書士の事務所によって大きく異なります。また、住んでいる地域や債務の状況・交渉の難易度によっても変わります。そのため、正確な平均費用を示すことは難しいですが、一般的な目安としては20万円~50万円程度となります。
着手金と成功報酬の内訳
通常、任意整理における弁護士や司法書士への費用は、依頼時に支払う着手金と減額が成功した場合に支払う成功報酬の2つの費用が必要です。弁護士や司法書士の事務所によって異なりますが、おおよそ着手金が1社あたり3万円~4万円、成功報酬が減額された金額の10%程度と考えられます。
成功報酬は交渉が成立し、債務の減額が成功した際に発生しますので、失敗した場合には成功報酬の支払いはありません。また、着手金は前払い、成功報酬は後払いとなっていることが一般的です。
任意整理の費用を安くする方法
費用を抑える方法として、無料や低額な料金で相談を受け付けている弁護士や司法書士事務所も存在します。また、条件によっては法テラス(日本司法支援センター)を利用して、無料や低額で債務整理を行うことも可能です。ただし、法テラスを利用する場合は、収入や財産状況などの要件がありますので、事前に確認が必要です。
任意整理ができない場合は?失敗したらどうなる?
任意整理は必ず成功するというものではありません。場合によっては、債権者との合意が得られず、任意整理に失敗する場合もあります。仮に任意整理に失敗した場合は、個人再生や自己破産など、他の債務整理を検討することになります。
債権者との合意が得られない場合
任意整理は債権者との合意に基づいて行われます。債権者が返済条件の変更に同意しない場合、任意整理が成立しません。
債務が複雑で交渉が困難な場合
債務が多くの債権者にまたがっている場合や、複数の借金の返済が重なっている場合など、債務の状況が複雑であると任意整理による交渉が困難になることがあります。
債務者の収入や資産が不十分な場合
任意整理では、債権者との交渉で返済条件を見直しますが、債務者の収入や資産が不十分である場合、返済が困難であることが明らかであれば任意整理が成立しないことがあります。この場合、個人再生や自己破産などの法的な手続きが適切な選択肢となることがあります。
債権者が特定できない場合
債権者が特定できない場合は、任意整理を行うことが困難となります。このようなケースでは、まず債権者を特定し、その後債務整理の手続きを進める必要があります。
特定調停とは?
特定調停とは、消費者金融やクレジットカード会社などからの借金を返済することが困難になった個人が、返済計画の再編成を行うために、地方裁判所に申し立てる手続きのことです。特定調停は民事調停法に基づいて実施される民事手続きであり、任意整理とは異なり、法的な手続きによる債務整理方法の一つです。
特定調停の流れ
1.債務者が地方裁判所に特定調停の申立てを行います。
2.裁判所が調停委員を選任し、調停が開始されます。
3.調停委員が債務者と債権者の間に入り、双方の意見を聞きながら適切な返済計画を提示します。
4.債務者と債権者が合意すれば、調停が成立し、新たな返済計画が策定されます。この調停内容は、法的な効力を持ちます。
5.債務者は新たな返済計画に従って返済を行い、債務整理が完了します。
特定調停のメリットとは?
特定調停のメリットは、弁護士や司法書士などの専門家に依頼しなくても、自分で手続きを行うことができることです。仮に、専門家に依頼せずに全て自分で行った場合、印紙代や切手代で1社あたり千円程度の実費のみとなります。
特定調停は、費用を抑えながら任意整理と同様に、毎月の返済額を減らすことができます。
法的効力がある
特定調停は地方裁判所を通じた法的手続きであり、調停内容には法的効力があります。そのため、債権者が調停内容に従わなければ、法的手段を取ることができます。
債権者の合意が不要
特定調停では裁判所が調停委員を選任し、債務者と債権者の間で適切な返済計画を立てます。そのため、債権者が協力的でなくても、調停が成立する可能性があります。
債務の一部免除
特定調停の過程で、債務の一部が免除されることがあります。これにより、債務の返済負担が軽減されることが期待できます。
返済計画の明確化
特定調停では、債務者の収入や生活費を考慮した返済計画が立てられます。返済計画が明確化され、債務者は計画通りに返済を進めることができます。
法テラスの利用
特定調停は、一定の要件を満たすと、法テラス(日本司法支援センター)の制度を利用して、手続き費用を抑えることができます。
特定調停のデメリットとは?
特定調停のデメリットは、手続きが複雑で、成立するまでに時間がかかることです。特定調停は法的な手続きとなりますので、自分で全てを行うとなれば、かなりの時間や手間が必要です。
また、特定調停は成功率が低い方法でもありますので、何ヶ月もかけて手続きを行っても失敗することがあります。
手続きが煩雑で時間がかかる
特定調停は法的手続きであるため、書類の作成や提出、裁判所での手続きなど、煩雑なプロセスが伴います。また、調停が成立するまでに数ヶ月から1年程度かかることがあります。
長期間に渡る個人信用情報機関への影響
特定調停の申立てが信用情報機関に記録され、一定期間、信用取引に影響を与えます。特定調停は法的手続きであるため、信用情報への影響がより長期間に及ぶことがあります。
手数料や費用がかかる
特定調停では、裁判所に申し立てる際に手数料がかかります。また、弁護士や司法書士に依頼した場合は、その報酬も費用として考慮しなければなりません。ただし、一定の要件を満たすと、法テラスの制度を利用して費用を抑えることができます。
調停が成立しない場合のデメリット
特定調停で調停が成立しない場合、個人再生や自己破産といった他の債務整理の手段を検討する必要があります。
全ての債権者に対応できない
特定調停は、主に消費者金融やクレジットカード会社などからの借金に対して行われます。しかし、税金や公共料金、養育費など、特定調停で対応できない債務も存在します。
特定調停の裁判所の費用は?弁護士に依頼した場合の料金は?
特定調停は、専門家に依頼せずに自分自身で申し立てを行うことができますが、その際にかかる必要は、申立手数料として1社あたり500円分の収入印紙、手続費用として1社あたり430円分(84円切手5枚、10円切手1枚)となります。仮に5社の申し立てとなれば、930円×5社分=4,650円となります。
弁護士に依頼した場合は、任意整理と同様に着手金として1社あたり3万円~4万円、調停が成立した場合は減額した金額に対して10%程度の成功報酬が必要となります。
特定調停の成功率は?
特定調停の成功率は、個々の債務者の状況や債権者との交渉内容、裁判所の判断などによって大きく変わりますので、具体的な数字を示すのが難しいですが、過去の事例から判断すると、特定調停の成功率は数%~10%程度となります。
特定調停が失敗した場合は、個人再生や自己破産などの他の方法を検討することになります。
特定調停が不成立になった後は?
特定調停が不成立になった場合は、任意整理、個人再生、自己破産のいずれかを検討することになります。特定調停の不成立後は、弁護士や司法書士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けて最善の方法を選択されることをおすすめします。
個人再生を行う
個人再生は、裁判所を通じて債務の返済計画を立て、一部の債務を免除して残りの債務を分割払いにする手続きです。債務者に一定の収入がある場合に適しており、住宅ローンなどの担保付き債務にも対応できます。
個人再生とは?費用やメリット・デメリット、任意整理との違い
自己破産を行う
自己破産は、裁判所に破産宣告を申し立てることで、債務を全て免除する手続きです。ただし、破産手続き中は自己破産者の財産が管理され、売却されることがあります。また、信用情報機関に長期間登録され、信用取引に大きな影響を受ける場合があります。
任意整理を行う
特定調停が不成立となった場合でも、債権者との交渉を続けて任意整理を試みることも可能です。ただし、任意整理は債権者の合意が必要なため、交渉が難しい場合もあります。