
経口補水液(ORS)とは、熱中症などの脱水症状を治療するために用いられる食塩とブドウ糖を水に混ぜた液体のことです。
経口補水液は、軽度から中等度の脱水症の下痢や嘔吐、発熱や発汗などの改善に使用され、体が失った水分と電解質を迅速に再補給し、それらを適切に吸収できるように作られています。
経口補水液は薬局やドラッグストアなどで購入できますが、自分で作ることもできます。また、経口補水液に炭酸水やクエン酸を加えることで、さらに水の吸収効率が高まるとされています。
経口補水液と水の違い
経口補水液(ORS)と水の主な違いは、ORSが水分に加えて電解質(塩分)と糖分を含んでいる点にあります。これにより、経口補水液は脱水症状の治療に効果的であり、水だけを飲むよりも迅速に体のバランスを回復させることができます。
水では電解質(塩分)が補えない
普通の水には電解質や糖分がほとんど含まれていません。そのため、脱水症状がある場合に、単に水を補給しても体内の電解質の不足は補えません。また、脱水症状の時に一度に大量の水を飲むと、逆に体内の電解質バランスを崩して体調が悪くなる場合もあります。
ORSは、特に下痢や嘔吐などで電解質と水分を大量に失った時に、効果的な補給手段となります。
経口補水液と点滴の違い
点滴は経口補水液と同じように、水分や電解質の補給を目的として行われますので、経口補水液と点滴は同じ成分となります。また、経口補水液は口に含んで飲むことで補給しますが、点滴は静脈注射によって直接体内に送り込まれます。
そのため、軽度から中程度の脱水症状の場合には、経口補水液は非常に効果的ですが、重度の脱水や下痢・嘔吐により、口から何も摂取できない場合には、点滴が選択されます。点滴は、速やかに水分と電解質を体内に補給することができます。
経口補水液とスポーツドリンクの違い
経口補水液(ORS)とスポーツドリンクは、いずれも脱水状態を改善するために使用されますが、主に使用目的と成分の配合比率の違いにより、それぞれ異なるシチュエーションで推奨されます。
経口補水液の特徴
経口補水液は、下痢や嘔吐などの脱水症状を引き起こす医療状況で使用されます。これらの症状は体から大量の水分と電解質を奪い、その結果、脱水症状が生じます。ORSは水、ナトリウム(塩)、カリウム、クエン酸ナトリウム、そしてグルコース(ブドウ糖)の特定の配合比率で構成され、これにより体内の電解質バランスを迅速に再補給・修正することができます。
病気による重度の脱水状態の場合、スポーツドリンクではなく経口補水液を使用することが推奨されます。スポーツドリンクの糖分の含有量はORSよりも高いため、下痢などの症状を悪化させる可能性があります。
スポーツドリンクの特徴
スポーツドリンクは、主に運動中、又は運動後の脱水状態とエネルギー消耗を改善するために使用されます。スポーツドリンクは、水、電解質(ナトリウムとカリウム)、糖類(エネルギー源)を含んでいますが、ORSと比べて糖分の含有量が高く、また風味付けや色付けのための成分も含まれていることが多いです。
スポーツドリンクは電解質の補給には有用ですが、病気による脱水症状に対する効果はORSほどではありません。それに対して、運動中の脱水状態やエネルギー消耗に対しては、スポーツドリンクが適しています。
経口補水液はどんな時に飲む?
経口補水液(ORS)は、主に下痢や嘔吐、熱中症などの場合に水分と電解質を補うために飲みます。
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下痢や嘔吐が続いている時
下痢や嘔吐などの症状は、体から大量の水分と電解質を奪い、脱水状態を引き起こします。特に乳幼児や高齢者は脱水になりやすく、その状態が重症化すると命に関わることもあります。経口補水液は、下痢や脱水の症状による水分と電解質の損失を効果的に補うことができます。
熱中症
過度の暑さや運動により、体から大量の水分と電解質が失われることがあります。このような場合、経口補水液を飲むことで脱水症状を予防、又は治療することが可能です。
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旅行者下痢症
旅行者下痢症は、特に発展途上国を訪れた旅行者によく見られる症状で、通常は飲食物による感染が原因となります。下痢が続くと脱水状態になりますので、経口補水液を用いて水分と電解質の補給を行います。
経口補水液が甘く感じる理由は?
通常、経口補水液は少ししょっぱいと感じるのが普通です。しかし、経口補水液を飲んで「甘い」と感じた場合、「何も味がしない」と感じた場合は、かくれ脱水症と呼ばれる脱水症状の一歩手前となっている可能性があります。
かくれ脱水症の危険性
かくれ脱水症とは、体の水分が減少している脱水症の手前の状態です。既に口の中が粘る、食べ物が喉を通りにくいなどの初期症状が出ている場合もありますので、すぐに経口補水液で水分補給と塩分の補給を行いましょう。
経口補水液の効果や効能とは?
経口補水液(ORS)の効果は、体内の水分と電解質(塩分)のバランスを回復させることです。経口補水液は、下痢や嘔吐、発熱や発汗などによる脱水症状の治療に、特に有用です。
特に発展途上国では、経口補水液が下痢症の治療に非常に有用なツールとして広く使用されています。
一般的にORSは安全で、大人から子供まで幅広く使用できます。ただし、経口補水液だけで重度の脱水症状を治療しようとすると、生命を危険にさらす可能性があります。重度の脱水症状がある場合、又は症状が改善しない場合は、医療専門家にすぐに連絡してください。
脱水の予防と治療
下痢や嘔吐、発熱などの熱中症の症状は、体から大量の水分と電解質を失う原因となります。経口補水液は、これらの損失を迅速に補い、体内の水分と電解質のバランスを修正します。
電解質バランスの回復
経口補水液はナトリウム、カリウム、クロライドなどの重要な電解質を含んでいます。これらの電解質は、神経と筋肉の機能、pHバランス、水分の移動、体内のエネルギー生成など、体の基本的な機能に不可欠です。
エネルギー供給
経口補水液に含まれるブドウ糖は、体のエネルギー供給源として機能します。さらに、ブドウ糖はナトリウムの吸収を促進し、体内での水分の保持を助けます。
経口補水液のメリットとは?
経口補水液(ORS)のメリットは、誰でも簡単に作ることができ、手軽に利用することができることです。また、経口補水液は大人や子供まで安全に幅広く使用することができますので、経口補水液には多くのメリットがあります。
誰でも簡単に利用できる
ORSは市販されているため、すぐに手に入れることができます。また、必要な材料が揃っていれば自宅でも簡単に作ることができます。
安全性が高い
経口補水液は、適切な量と正しい方法で使用されると、大人から子供、乳児まで安全に使用できます。
経済的なメリット
経口補水液は比較的安価であり、入手も容易です。これは特に発展途上国では重要で、脱水症状による死亡率を大幅に下げることに寄与しています。
経口補水液のデメリットとは?
経口補水液には数多くのメリットがありますが、逆にいくつかのデメリットも存在します。
美味しくない・味がまずい
経口補水液の味は、人によってはあまり好まれないことがあります。特に子供や高齢者には、塩辛さや甘さが抵抗を感じる原因となることがあります。
根本的な治療にならない
経口補水液は脱水症状を効果的に治療するためのものですが、脱水の原因となる下痢や嘔吐などの疾患自体を治療するわけではありません。したがって、根本的な治療としては不十分な場合があります。
過剰摂取の問題
経口補水液を適量以上に摂取すると、体内の電解質バランスを崩す可能性があります。特に塩分(ナトリウム)の過剰摂取は、体内での水分の過剰蓄積や浮腫(水分が体組織に溜まる状態)などを引き起こす可能性があります。
経口補水液の副作用は?飲みすぎるとどうなる?
経口補水液(ORS)は、脱水症の治療や予防のために使用され、適切に利用すると非常に有効です。また、適切な使用方法であれば、副作用はほとんどありません。しかし、適量を超えて摂取すると、身体に悪影響を及ぼす可能性があります。
電解質バランスの乱れ
経口補水液は、脱水によって失われた電解質を補充するために設計されています。しかし、必要以上に大量に摂取すると、体内の電解質バランスが崩れる可能性があります。特にナトリウムの過剰摂取は水分の過剰蓄積を引き起こし、脱水や浮腫などの問題を引き起こす可能性があります。
高血糖症のリスク
経口補水液にはブドウ糖や砂糖が含まれており、これらは体内でエネルギーとして使用されます。ただし、大量に摂取すると血糖値が一時的に上昇する可能性があり、特に糖尿病の持病がある人にとって、大きな問題となる場合があります。
下痢や腹痛
適量以上に経口補水液を飲むと、一時的な胃の不快感や下痢、腹痛などを引き起こす可能性があります。
経口補水液はどこで買える?どのお店で売ってるの?
経口補水液は、全国のドラッグストアや薬局、病院内の売店などで販売されています。また、楽天やヤフーショッピング、アマゾンなどのネット通販でも購入可能です。
経口補水液の値段は?
経口補水液の価格は店舗やお店、商品によって異なりますが、500mlの経口補水液1本あたり、おおよそ200円前後となります。ネット通販などで1箱24本入りのまとめ買いをすることで、1本あたりの値段を安くすることが可能です。
また、ゼリータイプの経口補水液は1個200円前後、パウダータイプの経口補水液の粉末は10包で800円~1,000円前後です。パウダータイプの経口補水液は携帯用に非常に便利で、粉末を水に溶かすだけで使えます。
経口補水液のレシピ
WHO(世界保健機関)のガイドラインに従って、自宅で経口補水液(ORS)を作ることも可能です。
経口補水液に必要な材料
・清潔な水:1リットル
・ブドウ糖、もしくは砂糖:20g(約5ティースプーン)
・食塩:3.5g(約3/4 ティースプーン)
経口補水液の作り方
1.1リットルの水を用意します。可能ならば、煮沸した後、冷ました清潔な水を使用してください。
2.水にブドウ糖、又は砂糖と塩を混ぜます。溶けるまでよく混ぜます。
3.もしあれば、クエン酸(レモンやグレープフルーツなど)の果汁を加え、よく混ぜます。お好みで、はちみつを加えても良いでしょう。
※上記は1リットルの経口補水液の作り方として記載しましたが、200mlや500mlで作る際は、ブドウ糖や食塩の量を調節することで、簡単に作ることが可能です。