サルモネラ菌とは、主に食品を介した感染症や食中毒を引き起こす細菌の一種です。サルモネラ属には2,500以上の異なる種が存在するとされています。
サルモネラ菌は動物の消化器系に存在し、食品の製造や処理過程で汚染されることがあります。生肉、鶏卵、乳製品などが主な感染源です。また、感染した動物を扱った後に手を十分に洗わないと、他の食品や物にサルモネラ菌が広がることもあります。
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サルモネラ感染症とは?
サルモネラ感染症は、サルモネラ菌によって引き起こされる感染症です。サルモネラ菌は多くの動物の消化器系に生息しており、特に鶏肉や卵に含まれることが多いのが特徴です。
サルモネラ食中毒の特徴
サルモネラ感染症の最も一般的な形態は、サルモネラ食中毒です。サルモネラ食中毒は、サルモネラ菌に汚染された食品を摂取することによって発生します。
サルモネラ食中毒の症状は、感染後12時間~72時間で表れ、腹痛、下痢、発熱、頭痛などがあります。多くの場合、体は1週間以内に自然に回復しますが、免疫系が弱っている人や高齢者、乳幼児は症状がより重症化し、長期化する可能性があります。
重症のサルモネラ感染症では、菌が腸壁を越えて血液に侵入し、全身に広がることがあり、合併症として敗血症や重症の腸炎、関節炎、髄膜炎などの重篤な病状を引き起こす可能性があります。
サルモネラ感染症とサルモネラ食中毒の違い
サルモネラ食中毒とサルモネラ感染症は、同じサルモネラ菌によって引き起こされますが、その病態には違いがあります。
サルモネラ食中毒の違い
サルモネラ食中毒は、サルモネラ菌に汚染された食物を摂取した時に起こる一般的な形態のサルモネラ感染症です。これによって引き起こされる症状は、通常消化器系に関連しており、腹痛、下痢、嘔吐、発熱などが挙げられます。ほとんどの場合、サルモネラ食中毒の症状は、数日から1週間以内に自然に改善します。
サルモネラ感染症の違い
サルモネラ感染症は、より広範で重症な感染を指すことがあります。これは、サルモネラ菌が腸壁を突破し、血流に侵入して体全体に広がることがあるからです。これが起こると、菌血症を引き起こす可能性があり、さらに重症な場合は敗血症や関節炎、髄膜炎といった症状を引き起こすことがあります。
したがって、サルモネラ食中毒はサルモネラ感染症の一部と言えますが、サルモネラ感染症はより広範で重症な症状を含む可能性があります。
サルモネラ食中毒の症状は?サルモネラ菌に感染するとどうなる?
サルモネラ食中毒はサルモネラ菌による感染症で、下痢や嘔吐、頭痛や発熱などの症状を引き起こします。
下痢や腹痛、嘔吐
通常は急性で、場合によっては血便を伴うこともあります。また、腹痛や腹部の不快感が生じます。また、一部の人は吐き気や嘔吐が発生することもあります。
頭痛や発熱
38度以上の発熱が見られることがあります。また、サルモネラ食中毒の一部の患者は頭痛を経験します。
サルモネラ感染症の原因は?サルモネラ食中毒の原因食品
サルモネラ食中毒は、サルモネラ菌の感染症によって引き起こされます。サルモネラ菌は、多くの動物の腸内に生息しており、感染源となる食物は生肉や卵、生食の魚介類などがあります。
食品が適切に調理、又は加熱されていない場合、あるいは食品が汚染された表面や器具に触れた場合には、サルモネラ菌が人間の消化器系に入り込み、症状を引き起こします。
生肉や加工肉
特に鶏肉や豚肉にはサルモネラ菌が存在する可能性があります。
生卵や卵製品
サルモネラ菌は鶏の卵の内部、又は外部に存在することがあります。
乳製品
生乳や生乳から作られた乳製品も、サルモネラ菌の感染源となる可能性があります。
生食のシーフード
特に二枚貝などの魚介類や生食シーフードは感染リスクがあります。
野菜や果物
農薬や肥料、汚染された水による灌漑用水により、サルモネラ菌が野菜や果物に感染することがあります。
ペットフード
生肉をベースにしたペットフードにサルモネラ菌が存在することがあります。ペットが生肉を食べた後に、人間がペットを触ることで感染することがあります。
サルモネラ菌になりやすい人とは?
サルモネラ菌への感染リスクは全ての人に存在しますが、特定の条件を持つ人は感染する可能性がより高いです。
また、高リスクなグループは、感染した場合に症状が重症化しやすく、治癒までの時間が長くなる場合があります。そのため、サルモネラ感染症になりやすい条件を持つ人は、サルモネラ菌への感染を防ぐための予防策を取ることが重要です。
免疫系が弱っている人
癌やHIV、移植後の抑制療法などで免疫系が弱っている人は感染リスクが高まります。
乳幼児と高齢者
乳幼児はまだ免疫系が完全に発達していないため、高齢者は年齢と共に免疫力が低下するため、感染リスクが高まります。
慢性病を持つ人
糖尿病や腎疾患などの慢性病を持つ人は感染リスクが高まります。
消化器系の問題を持つ人
胃酸の分泌が少ない人、胃や腸を取り除いた手術を受けた人などは、サルモネラ菌の感染リスクが高まります。胃酸は体内に入った病原体を殺す役割を果たすため、胃酸の量が少ないとサルモネラ菌に対する体の防御力が弱まります。
サルモネラ菌は人にうつる?
サルモネラ菌は人から人へ伝播することがあります。サルモネラ菌は動物の腸内に生息しているため、感染した動物の肉や卵を食べることで人間に伝播します。また、人間の排泄物もサルモネラ菌を含むことがあります。
サルモネラ感染症が人にうつる経緯や感染ルート
感染した人が適切な手洗いをしない場合、その人が触れた物や食品を通じて、他の人に感染する可能性があります。
また、サルモネラ菌はペットからも人間に伝播することがあります。特に爬虫類や鳥はサルモネラ菌を保有していることが多く、ペットとの接触後に手洗いを怠ると感染のリスクがあります。
サルモネラ感染症のリスクを最小限に抑えるためには、食品を適切に調理し、手洗いを徹底し、ペットとの適切な衛生管理を行うことが重要です。
サルモネラ食中毒の潜伏期間
サルモネラ食中毒の潜伏期間は、感染したサルモネラ菌の種類や摂取した菌の量、個々の免疫状態によりますが、通常は12時間から72時間とされています。つまり、感染源となる食品を食べた後、12時間から3日程度で症状が表れます。
サルモネラ食中毒を予防するには?
サルモネラ食中毒を予防するには、食材の加熱や食品の適切な保存、手洗いの徹底が重要です。サルモネラ感染症は他の人にうつしてしまう場合もありますので、手洗いは非常に重要なポイントです。
食品の適切な調理
肉、魚、鶏肉、卵などの食品は、十分に加熱することが重要です。特に鶏肉や卵は中心部までしっかりと加熱することで、サルモネラ菌を不活化させることができます。
食品の取り扱い
生肉や生魚、生卵と他の食品を分けて取り扱い、生の肉や魚、卵を調理した後は、必ず手を洗うことが重要です。手洗いは交差汚染を防ぐためにも特に大切です。
手洗いの徹底
食事の前後、料理の前後、トイレを使用した後、ペットを触った後など、手洗いを徹底することが重要です。
食品の保存方法
食品は適切な温度で保存し、食品が腐らないようにします。特に冷蔵庫の温度は4℃以下に保つことが推奨されます。
野菜や果物の洗浄
サルモネラ菌は農薬や肥料などによって、野菜や果物に感染することがあります。そのため、これらを食べる前には十分に洗うことが重要です。
サルモネラ食中毒の対処法や治療方法は?
サルモネラ食中毒は、水分補給や休息によって自然に回復します。ただ、サルモネラ食中毒の症状が重度の場合、症状が長期間続く場合、高熱や血便が見られる場合は、すぐに医療機関に連絡することが重要です。特に乳幼児、高齢者、免疫力が弱い人は、症状が軽度であっても医療機関に連絡することをお勧めします。
水分と電解質の補給
サルモネラ食中毒は、下痢や嘔吐により体内から大量の水分と電解質が失われるため、水分を補給することが重要です。水分補給は口から行うことができますが、重症の場合は点滴が必要なこともあります。
十分な休息
体力を回復し、体の自然な治癒過程を助けるために、休息が必要です。
抗生物質の投与
ほとんどのケースでは、サルモネラ食中毒は自然に治癒しますが、重症の場合や免疫力が弱い人の場合は抗生物質が必要なこともあります。抗生物質は医師の指示に従って使用する必要があります。
サルモネラ食中毒の後遺症や合併症は?
サルモネラ食中毒の後遺症や合併症は一般的には稀で、大半の患者は完全に回復します。しかし、稀に重篤な後遺症や合併症を引き起こすことがあります。
脱水症状
サルモネラ食中毒による激しい下痢や嘔吐は、体内の水分と電解質を大量に失うため、脱水症状を引き起こすことがあります。これは特に幼児や高齢者にとって重篤な問題となります。
敗血症(sepsis)
サルモネラ菌が血液に入り込むと、全身の感染症(敗血症)を引き起こすことがあります。これは非常に重篤な状態で、即時の医療介入が必要です。
感染性関節炎
サルモネラ感染症が関節に影響を与えると、感染性関節炎という状態が生じることがあります。これは関節痛や関節の腫れといった症状を引き起こします。
ライター症候群
ライター症候群の病状は、特に若い男性においてサルモネラ感染症の後に見られることがあります。症状としては、関節痛、眼炎、排尿時の痛みなどがあります。
過敏性腸症候群(IBS)
一部の研究では、感染性胃腸炎(サルモネラ感染症を含む)の後に、IBSが発症するリスクが高まる可能性が示されています。IBSは腹痛、腹部の不快感、便通異常(下痢、便秘)などの症状を引き起こします。
溶血性尿毒症(HUS)
非常に稀ですが、サルモネラ食中毒の後に、腎臓にダメージを与える病状を引き起こすことがあります。これは生命に関わる合併症で、急性腎不全を引き起こす可能性があります。