ヘッドホン難聴とは

ヘッドホン難聴とは、ヘッドホンやイヤホンで大音量の音楽や動画などを聞くことによって起こる難聴を指します。イヤホン難聴、騒音性難聴、音響性聴器障害とも呼ばれます。

ヘッドホン難聴は特に10代~20代の若い世代に多く、WHOの発表では世界で11億人もの若者がヘッドホン難聴のリスクがあるとしています。

ヘッドホン難聴が怖いのは、1度失った聴力は二度と元へは戻らないことです。また、ヘッドホン難聴は初期症状がほとんどなく、耳鳴りや耳が詰まったような感じがしてから、ヘッドホン難聴に気付くことが多いのです。異変に気が付いた時には、既に症状が重症化しているケースもありますので、ヘッドホンやイヤホンを使って音を聞くのは非常に危険なのです。
突発性難聴とは?初期症状や原因、チェックや予防・治療方法

ヘッドホン難聴の症状や特徴とは?

ヘッドホン難聴の症状や特徴

ヘッドホン難聴は、耳鳴りや耳の詰まりといった症状が特徴です。キーンという金属音のような高い音が聞こえたり、ブーンという虫が飛んでいるような音が聞こえることもあります。

初期症状では、耳にちょっとした違和感を感じるだけですが、症状が進行すると耳の中にゴミが詰まったような、蚊やハエなどの虫が入ったような感じがすることもあります。

耳鳴り・めまい

ヘッドホン難聴の1番の特徴は耳鳴りです。何も音がしない静かな場所でも耳の中でキーン、キーンという音、ブーン、ブーンと虫が飛んでいるような音、ブー、プーというブザー音やホイッスルのような音などが聞こえます。また、耳鳴りと同時に、めまいの症状が出る場合もあります。耳鳴りは一時的に起こることもあれば、10分~20分以上も続く場合もあります。

耳の詰まりや圧迫感

耳に圧力がかかった感じや耳が詰まったような感じの症状が出る場合もあります。耳の詰まりも、ヘッドホン難聴の特徴的な症状の1つです。

聞こえにくさ・音のゆがみ

ヘッドホン難聴は、人が話している声や日常の音が聞き取りにくくなります。人によって症状は異なりますが、高い音が聞き取りにくくなったり、低い音が聞こえなくなったりします。また、聞こえる音が歪んだり、変わったりして聞こえる場合もあります。

ヘッドホン難聴のセルフチェック方法

ヘッドホン難聴のセルフチェック方法

ヘッドホン難聴のセルフチェック方法を下記に記載します。下記の項目の多くに当てはまる場合、聴力が低下している可能性があります。聴力に関する変化を感じた場合は、すぐに医療専門家に相談されることをお勧めします。

ヘッドホン難聴のチェックリスト一覧

1.他の人には普通に聞こえる音が聞き取りにくい、遠くに感じる。
2.雑音のある環境で、他の人の会話を理解するのが難しい。
3.音がない場所でブーン、キーンといった耳鳴りが聞こえる。
4.テレビや音楽の音量を上げて聞くことが多い。
5.音楽などの音を聞いた後に、頭痛や疲労感がある。
6.以前と比べて、同じ音が聞こえにくくなっている。
7.高音と低音、あるいは似たような音を区別するのが難しい。
8.音楽やビデオ、動画などを聞くときなど、一日の大半をヘッドホンで過ごしている。
9.ヘッドホンで音楽を聞くとき、大音量で聞くことが多い。

ヘッドホン難聴の原因とは?

ヘッドホン難聴の原因

ヘッドホン難聴の原因は、大音量でヘッドホンやイヤホンを長時間使用することです。

耳は、聴覚の神経細胞である有毛細胞が音波を電気信号に変換し、それを脳に送信することで音を認識します。しかし、大音量の音を長時間聴き続けると、有毛細胞が過剰に刺激されて損傷し、聴覚が低下します。

音量の大きさ

WHOの指針では、成人の場合、80dB(80デシベル)の音量で1週間あたり40時間以上聞き続けると難聴になるとされています。子供の場合は、75dBの音量で1週間あたり40時間以上が難聴の目安です。

80dBは、電車や地下鉄の車内、飛行機の機内、パチンコ店内、カラオケ店内、救急車のサイレンなどです。

長時間の使用

音量が適切であっても、長時間連続してヘッドホンやイヤホンを使用すると、耳の有毛細胞が壊れていき、聴覚損傷を引き起こすことになります。

ヘッドホン難聴の基準

ヘッドホン難聴の基準

ヘッドホン難聴のリスクは、音量と使用時間によって決まります。そのため、ヘッドホン・イヤホンのどちらを使っていても、基準である80dBで1週間あたり40時間以上の使用があれば、ヘッドホン難聴になる可能性が高くなります。

ヘッドホン難聴の音量と使用時間

成人の場合:80dBの音量で1週間あたり40時間以上
子供の場合:75dBの音量で1週間あたり40時間以上
※98dBの音量では、1週間あたり75分以上になります。

ヘッドホンとイヤホンはどっちが耳に悪い?

ヘッドホンとイヤホンでは、イヤホンのほうが耳の内部に直接フィットして音が耳に届きやすいため、ヘッドホン難聴のリスクを高めると思われます。

しかし、ヘッドホン難聴の基準を超えて大音量の音楽を聞いていれば、ヘッドホンでもイヤホンでも同じリスクがあると言えます。そのため、ヘッドホンは安心、イヤホンだと耳に悪いといったことはありません。どちらも同じように、ヘッドホン難聴になる危険性があります。

ヘッドホン難聴を予防するには?

ヘッドホン難聴を予防するには

ヘッドホン難聴を予防するには、ヘッドホンやイヤホンでは音楽を聞かないことです。ヘッドホン難聴は、ヘッドホンやイヤホンを使って大音量の音楽などを聞くことが原因です。そのため、ヘッドホンやイヤホンを使わず、大音量で音楽を聞かなければ、ヘッドホン難聴になることはありません。

ただ、どうしてもヘッドホンやイヤホンで音楽を聞きたい、動画を見たいという場合は、音量を下げて1時間に1度は休息を取ることが重要です。

音量を下げる

ヘッドホンやイヤホンで音楽などを聞く場合は、80dB以下の音量にすることが重要です。

普段、私たちが家族や友人と普通に話をするときの声の大きさは、50dB~60dBと言われています。大声で話しているときは88dB~99dB、ささやき声やヒソヒソ話が20dB~30dBとされていますので、普段の声の大きさよりも音量を下げて聞くことになります。

長時間の利用をやめる

ヘッドホンやイヤホンによる長時間の利用は、ヘッドホン難聴になるリスクが高くなります。特に1時間以上の連続した利用は、さらにヘッドホン難聴のリスクが高くなりますので、1時間に1度は耳を休めることが大切です。

また、厚生労働省の指針では、ヘッドホン難聴の予防として、ヘッドホンやイヤホンの使用は1日1時間未満に制限することとしています。

ヘッドホンやイヤホンは使わない

ヘッドホン難聴にならないためには、ヘッドホンやイヤホンを使わないことです。

また、テレビやラジオ、動画や音楽などの音がするものを聞く場合は、出来る限り音量を下げて利用することが重要です。そもそも、ヘッドホンやイヤホンを使って大音量の音楽などを聞かなければ、ヘッドホン難聴にはなりません。

ヘッドホンやイヤホンは非常に便利ではありますが、ヘッドホン難聴を予防するためにはヘッドホンやイヤホンは使わないという選択も必要です。

ヘッドホン難聴の治し方や治療方法とは?

ヘッドホン難聴の治し方や治療方法

ヘッドホン難聴は、初期段階の有毛細胞が壊れる前であれば、治療することで回復する可能性があります。しかし、ヘッドホン難聴の症状が重症化している場合には、残念ながら現在の医療技術では治すことができません。

そのため、耳鳴りがする、めまいがする、耳がつまったような感じがするといった症状が出たら、すぐに病院で診察を受けて適切な治療を受けることが大切です。

安静にして耳を休める

耳の聞こえが悪かったり、耳鳴りがする場合は、ヘッドホンやイヤホンの使用をやめて、耳を休めることが重要です。また、出来る限り静かな場所で安静にすることが重要となりますので、入院して治療に専念することも必要です。

ステロイド剤による薬物療法

ヘッドホン難聴は、突発性難聴と同じようにステロイド剤による薬物療法を行うことになります。ただ、ヘッドホンやイヤホンの使用によって、既に有毛細胞が壊れてしまっている場合は、薬物療法による治療を行ったとしても治すことはできません。

有毛細胞は1度死んでしまうと再生することはありませんので、現在の医学では治すことは不可能です。